新たな電話応対のトレンドと戦略的品質管理
1.移り変わる!コールセンター・コミュニケーション
言葉は時代の経過とともに変化するものと言われています。
少し前だったら誤用とされていた言葉遣いも使用頻度が高くなるといつしか容認され、一般的な言葉となることもあるようです。
私はコールセンターの仕事をするようになって25年以上が経ちますが、言葉が日々変化するように、電話コミュニケーションの世界も時と共に変わっていることを実感しています。
その昔は、コールセンターで働くのは女性が中心だったこともあってか、コミュニケーターは頭のてっぺんから出すような裏返ったお化粧声で話をしていたものです。
それはコールセンターだけでなく、多くの家庭で、母親が電話では普段とはちょっと違うよそ行きの声で話していたのと同じだと思います。
このように、日々のコミュニケーションの質や雰囲気は移り変わるものですが、コールセンターの応対は現在、転換期を迎えているのではないかと感じています。
今も昔も多くの企業(コールセンター)がより高いサービスを追求して品質管理を行っていることには変わりありませんが、その方向性に変化が見られるのです。
下図にもある通り、以前の応対は企業としての定型にとらわれたり、典型的なマナー重視だったといえるかもしれません。
一説によると、コールセンター業界が日本で産声をあげた際、最初に教育に入ったのが当時のJALのスチュワーデス(現在でいうCA、客室乗務員)出身者だったことから、マナーを磨くことがおもてなしと考えられるようになったと言われています。
また、お客さまに相対する姿勢として、「企業としてどうあるべきか」といった企業視点の応対が中心の時代が長く続きましたが、最近では、「お客さまからみてどうか」といった顧客視点が主流になってきています。
マナー重視も、「企業からみて何が大切か」を追求した結果であったともいえるでしょう。
消費者の感覚とすれば実に理解しやすいことですが、お客さまは間違いや癖のない日本語で話されると嬉しい気持ちになるかといえばそうではなく、当たり前ですが寄り添うような、親身を感じる温かさ、プロとしての提案などを求めているのです。
2.お客さまのコールセンター満足度調査からみえてきたこと
モニタリングの運用方法
コールセンター白書によると、お客さま満足度調査を実施しているコールセンターは45%にものぼるそうです。
実際、コールセンターに電話をすると、電話を切ったと同時にSNSやEmailで満足度調査の依頼が飛んで来ることが少なくありません。このような仕事をしていることもあり、私はなるべく早く回答をするように心がけていますが、もし終話と同時にアンケートに答えれば、電話が終わった数分後にはコールセンターはその結果を得ることができるのです。
先日、所用があり契約している携帯電話会社に電話をしたところ、すぐにアンケートが送られてきました。そのなかに『【設問9】オペレーターから「良い評価」をつけるよう依頼がありましたか。』という設問があり、この会社はオペレーターを信頼していないのか、何か事件でもあったのか...と想像し、少し笑ってしまいました。
いずれにしても、その会社がこれほどまでにお客さまの真の声が聞きたいという意思は十分に伝わってきました。
3.新たなコールセンターの風潮
コミュニケーションの変化の背景には、外資系企業が新しい風を吹き込んでいるということもあるでしょう。
外資系の会社が日本でコールセンターを運営する際、これまでのコールセンター業界の慣習やセオリーなどをさほど気にすることなく、独自の手法によってひたすらより高いお客さま満足を追求している様に感じます。
お客さまの満足度を測る際、★5つを満点とすると、多くの企業は、『3と4を中心として、5があれば嬉しい、2はある程度出るだろう、1は出してはならない』と目標設定するのではないでしょうか。
一方で、具体的な企業名は避けますが、世界でも多くのファンを持つ、コンピューターや携帯電話端末メーカーのコールセンターでは、『満足度は、★4つと5つが目標値。★3(普通)が続くと、SVがすぐに指導にくる』と聞きます。
4.上向き傾向のコールセンターの応対品質
消費者はわがままなもので、生活するなかで質の高いサービスに触れていくうちにそのクオリティに慣れてしまい、気づかぬうちにより質の高いサービスを期待するようになるものです。
これはコールセンターに限ったことではないでしょう。
スーパーマーケットに行くと、いつからかレジの担当者が体の前で小さく手を合わせ挨拶する様子をみたり、デパートで買い物をすると包装紙をとめるセロテープはデパート名が書かれたところで左右均等に空白をあけてカットされ、その上で開封しやすいように端は細く折りたたまれていたりします。
外国人観光客はそのきめ細やかなサービスに驚き、感心するようですが、お客さまサービスを担う人たちにとっては、日々、より質高い期待値をクリアするような感覚かもしれません。
ただ、サービスの質が上向き傾向なのはしばらく続くのではないでしょうか。
5.戦略からコールセンターの目標値を設定する
そのような環境のなかでコールセンターが応対品質の目標値を設定する際、やみくもに高いレベルを目指す必要はないと考えています。
なぜならば、上質な応対を安定して提供するためには、お金と時間がかかるからです。
コールセンターの品質レベルが高い企業をみると、品質管理に多くの人員と時間、コストをかけていることがわかります。
上質な応対は自然発生的に出るものではなく、きめ細かな日々の努力と工夫の積み重ねによってしか成し遂げられないのです。
そのため、企業における戦略的な目標値は、コールセンターの役割や位置づけ、お客さまの期待値、業界の動向やレベルなどを踏まえて定めることが、今後の品質管理のあり方ではないかと考えます。
いかがでしたでしょうか。
応対品質を考える際は、つい自社の事情ばかりに目が行きがちですが、様々なお客さまサービスを俯瞰し観察して、自社のお客さまのニーズを照らし合わせた上で、現在の応対がどうなのかを見てみると、また違った角度からの気づきがあるかもしれません。
参考になりましたか。
コールセンター・チーフコンサルタント 石橋由佳
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