コミュニケーター研修における学習定着率の追求とは

1.「わかる」と「できる」の差に気づくことから

boosterでは日々、コールセンターのコミュニケーター研修を実施しています。

各クライアント様が考える課題やニーズに応じて、カリキュラムをカスタマイズしますが、どの研修であっても「わかる」ではなく、「できる」「体の感覚で覚える」を念頭に置いて学習を設計します。

電話コミュニケーションは、「わかる」と「できる」に大きな乖離があり、まずは本人が「できていないこと」に気づくところからスタートします。

例えば、「ゆっくり話す」ことの重要性は誰もが認識をしていますが、実際にゆっくり話せている人は半数程度です。

残りの人たちは話す速度に気をつけて話しているものの、お客さま感覚で聞くとそれでもまだ速く感じることが多いのです。

コールセンターでの勤務経験がなく自分の話している音声を聞いたことがない人やモニタリングで振り返る機会が少なかったコミュニケーターは、意識しているイコールゆっくり話せている(できている)と思いがちです。

そのため、研修ではロールプレイングを録音してその場で聞くことで、自分の話し方がまだ速いと気づかせます。学びはそこからがスタートとなります。

このように、カリキュラムではまず気づきを与え、次に概念を理解し、それから「できる」ようになるためのプロセスを組むことが大切になります。

2.学びの種類による学習定着率

では、「できる」を目指した学びとはどういうものでしょうか。

ここで、アメリカ国立訓練研究所が提唱する「ラーニングピラミッド」をご紹介したいと思います。「ラーニングピラミッド」とは、複数の学習方法を学習定着率の高い順に並べ、ピラミッド状に表現したもので、講義を聞くだけのものから、他者に教えるという学習方法まで7段階に分けられています。

以下は「平均学習定着率」を示す図で、学びが能動的(アクティブ)なほど学習の定着化が図れるとされています。

これに当社が実施している研修カリキュラムを当てはめてみましょう。
(⬅の内容がboosterの研修カリキュラム)

・講義を受ける-5% ⬅ 概念を理解するための講義

・資料や書籍を読む-10% ⬅ 研修テキストを声に出して読む

・見て聞く(視聴) -20% ⬅ 他センターの応対やロールプレイング録音音声を聞く

・実演を見る-30%⬅ 講師のデモストレーションを聞く

・話し合う-50% ⬅ 受講生同士のディスカッションで討議し発表する

・自ら体験する-75% ⬅ 声出し練習やロールプレイングで実践する

・他者に学んだことを教える-90% ⬅ 『学びのサポート役』となり他者に教える

この7つの学習方法のすべてを研修に盛り込んでいますが、なかでも多くの時間を割いているのが下3つのアクティブラーニング(話し合う・自ら体験する・他者に学んだことを教える)の部分です。

3.「学びのサポート役」を通じての学習

7つの学習方法のなかで最も学習の定着率が高い、「他者に学んだことを教える」は、弊社では『学びのサポート役』という学習メニューで展開しています。

コールセンターの研修では、ロールプレイングは必ずといっていいほど実施され、2人1組のスタイルがスタンダードです。

しかしながら、やり方によっては時間をかけた割には効果がない、それどころか馴れ合いのフィードバックで学びが少なく、かえって低いレベルで満足してしまうという状態になることもあります。

そのような無駄な学習にならないよう、お客さま役には『学びのサポート役』という役割を与えましょう。

例えば5分程度のロールプレイングであれば、その5分間のなかで必ず相手(コミュニケーター役)のレベルを少しでもあげることをミッションとします。

『学びのサポート役』は自分がうまくできるか否かは関係なく、目を閉じてお客さま感覚を研ぎ澄まして聞き、なにか気づいたことがあれば、それを伝えるようにします。

自分よりも上手に話す相手だとつい感心するだけで終わりがちですが、その場合は、さらなる上の応対を追求し何かしらのアドバイスをするように促します。

これのアドバイスは効果的です。

スタートした当初『学びのサポート役』は、「(相手が)とても上手で改善点などはない」と言いますが、ペアとなったコミュニケーター役から真剣な眼差しでアドバイスを求められると、何かしら感じたことを伝え始めます。

その意見に従って、ロールプレイングを繰り返していくと、ほんの数分のロールプレイングで応対がワンランクアップすることが多いのです。

そのような場面に遭遇できたときに『学びのサポート役』は、お客さまとしての自らの感覚に確信を持つことができ、自分がお客さま役になったときよりも、精度高く話せるように努力をするようになります。

このことは、お客さま役のコミュニケーターにとっても大きな成果をもたらします。

4.研修の振り返り

どの研修であっても、カリキュラムの最後は受講生からの「本日の気づき」、「今後、トライしたいこと

(宣言)」のふたつの発表で締めくくります。

その日の学びを振り返って気づいたことを整理し、またその学びを今後、どのように活かしていくのかを考え、共に学んだ仲間に宣言をするのです。

この時間は、受講生にとっても重要ですが、講師や研修を企画した担当者にとっても貴重な時間です。

計画当初の研修ゴールに対して適切なアウトプットになっているか、どのカリキュラムやアプローチが受講生の心を揺さぶり、決意につなげることができたのかを見極めていきます。

また、それぞれの受講生のモチベーションの状態も細かくウォッチします。「よし、試してみるぞ!」といったチャレンジする気持ちや、「できる気がする」という自信を持たせて終えることも大切です。

研修スタート時の受講生一人ひとりのポテンシャルは異なりますが、学びを通じて自分なりに成長や変化が確認できた場合は、たとえそれが他者よりもまだ低いレベルであっても、トライする気持ちは湧き出てくるものです。

その動機づけに繋がるのが、自分が他者に教えたときの学びにあると考えています。他者にアドバイスできるということは、顧客の感覚を得た証拠であり、理想の応対についてのイメージをつかめた、ということを意味します。

あとは試行錯誤を繰り返しながら理想の話し方に近づけていけば良いのです。

研修は多くの時間と労力、費用がかかります。それらの投資に見合う研修を追求するためには、学習の定着という観点で設計し、実施することが一番大切です。

一度、貴社センターの研修を「定着」というキーワードで見つめ直してみるのはいかがでしょうか。

参考になりましたか。


コールセンター・チーフコンサルタント 石橋由佳

サービスのご紹介

「感じのよい応対」を目標として、学習効率の高いカリキュラム。「わかる」を「できる」に変えるため、オリジナルのテキストやロールプレイングを取り入れた実践型の研修です。

コールセンターの要であるスーパーバイザーへの研修は、センターの実情に合わせて柔軟にカスタマイズした研修カリキュラムをご提供します。「わかる」を「できる」に変える実践型トレーニングです。