電話応対よりもEメール応対の方が品質改善しやすい?!

電話応対よりもメール応対の方が効率的で確実な品質改善ができる?!

顧客応対の一つのチャネルとしてすっかり定着したEメールですが、最近では、応対の品質を意識する企業も増えており、電話応対と同様に品質改善を試みるセンターも少なくありません。

しかしながら、ひとくちに品質管理といっても電話応対と異なる点が多々あります。今回は、両者の違いについて考えてみたいと思います。

電話応対とEメール応対の品質改善を考えるうえで前提となる2つの大きな違いは、Eメール応対では応対品質に対する個人のスキルの影響度が比較的低いという点です。

電話応対の場合、スクリプトによって会話全体の流れや具体的なトークなどを指導ができたとしても、声の表情や抑揚、スピードなど担当者自身の会話のスキルに左右される部分も重要となります。

一方、Eメール応対の場合はテンプレートを使用することが多く、個人の技量の影響度が低いと言えます。そのため、テンプレートの改善が品質改善の成否に大きく影響するということを見過ごせません。

したがって、Eメール応対の品質改善には以下のような特色があります。

(1) 課題を顕在化しやすい
(2) 品質改善のスピードが速い
(3) 品質改善実施後は劣化しにくい
(4) 100点満点の応対を目指すこともできる

(1) ですが、何と言ってもEメールの場合、すべての応対が可視化されているため、1本1本の応対の最初から最後までをチェックしてスピーディーに課題を発見することができます。
当然ながら、数多くの応対を比較するのも容易です。電話応対の場合、すべての応対が録音されていたとしても、それをすべて聞き、傾向や課題を把握するにはかなりの時間と労力を要することは言うまでもありません。

したがって、品質改善に着手しやすいと言えます。

さらに、Eメールの品質改善の場合、(2)の改善のスピードが速いのも特徴です。すでに述べましたが、Eメール応対では品質への個人特有のスキルの影響度が低く、文章全体の流れや言葉遣い、質問の仕方など「型」でできる部分が多いため、比較的改善策を講じやすく、また結果も反映されやすいのです。

そのため、優れたテンプレートの開発と共有ができれば、品質改善のかなりの部分は成功する確率が高いと言っても良いでしょう。

また、過去のお客さまとのやりとり履歴から同じような問い合わせを検索して、ヒットしたメールをベースに一部を書き換えて返信文を作成することも行われています。そのため、優れた回答を書ける人がいれば、その人が書いたメールがそのままセンターの財産となり得るのです。

いったん品質改善がされると、崩れにくいのもEメール応対の特徴です。電話応対の場合、品質改善に成功し、応対品質のレベルが上がっても、それを維持するのは至難の業です。

メンバーの入れ替わりや、それによるセンター内の雰囲気の変化、モチベーションなど在籍者のコンディションの変化に影響を受けやすく、一度は向上した品質が急激に下がることも珍しくありません。

これに対し、Eメール応対では、テンプレートなどの優れたツールを開発(あるいは改善し)使い方が普及すると、そこから急激に劣化することはあまりありません。お客さまからの問合せ内容の変化など、別の要因があればまた対応しなければなりませんが、それでも急激な品質の変化にはつながりにくいと言えます。

最後に、Eメール応対の場合、「100点満点の応対」を目指すことも可能です。これには、センターとして「理想の応対」が明確化されていることが絶対条件となりますが、「理想の応対」を実現するためのテンプレートの開発と、テンプレートだけで処理できない部分(カスタマイズが必要な部分)の品質向上ができれば、十分可能です。

実際、私たちが改善に携わったセンターの事例を紹介しましょう。

通販会社A社では、数年前から電話応対ほほかにEメールでの応対窓口も設置してきました。弊社でサポートを始めた時点で、A社ではすでに基本的なスキルを中心に品質改善に取り組んでおり、文章の構成や正しい言葉遣い、オープニングからクロージングまでの文章の流れなどはすでに一定以上の品質を確保している状態でした。

そのうえで、より一層の品質改善を目指したいということでした。

A社のご担当者様の悩みとしては、メール応対もコールセンターと同様に定期的にモニタリングチェックをしているものの、Eメールにはテンプレートをコピー&ペーストした部分が多く含まれるため、その多くが高得点となってしまい、センターの本来の力量や、個々のお客さまへの応対能力や、スタッフごとの課題が発見しづらいとのことでした。

そこで、私たちは、どのような応対を目指したいかを担当者とじっくり話し合い、まずは応対のミッションを策定し、それをベースに目指すべき行動(メール)を明確にし、最終的にEメールのモニタリング評価基準を設定しました。

打合せを重ねた結果、「顧客満足を最優先にした応対」「お客さまひとりひとりに合わせた応対」を目指すという方針が確認されたのですが、当初すでに一定レベルにあった品質をもう一段階引き上げるのは難しいのではないか、という予測もありました。

そんな中で、まずはモニタリングシートに照らして全コミュニケーターのメールを評価し、課題の洗い出しを行いました。

すると、長年ご愛用いただいたお客さまへの感謝の気持ちの表現や、解約をお申し出いただいた方への再提案の流れ、とくにテンプレートを貼り付けた後の「つなぎ」の悪さなど、いくつかの課題が浮かび上がりました。

さらに、センターで推奨していた商品のお勧めなどが徹底されていなかったことも判明したのです。

品質評価を実施した結果、わかりやすい文章構成や魅力的な表現を用いているスタッフもいたため、センター内での目指すべき応対の徹底や、そうした内容に基づくテンプレートの修正、承認プロセスにおけるスタッフ育成などをご提案しました。

その後、年1回の品質調査で定点観測をしてみると、モニタリングシートで100点満点に近いEメール応対が出現し始めたのです。もちろん、同時に新たな課題も発見されたのですが、応対策が検討され、指導が行われれば課題の克服も早晩実現するでしょう。

このように、Eメールの場合、コールセンターよりは少ない労力で効率的かつ確実に品質改善が可能です、と言えるのではないでしょうか。電話だけでなくEメールの対応も実施しているのであれば、Eメール応対の品質改善にも着手されてみてはいかがでしょうか。

参考になりましたか。

コールセンター・チーフコンサルタント 石橋由佳

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コールセンターが抱えるさまざまな課題を解決する、業務改善サービス。企業の現状を把握し、着実で効率のよい改善計画の立案・実施をお手伝いします。

弊社のコールセンター現状診断は、応対品質のみならず、運営面における課題も把握し、顧客満足と事業貢献を両立するコールセンターづくりをお手伝いします。