コールセンターの応対品質管理は平均値よりも分布!?

コールセンターの品質管理は「平均よりも分布」が大きなポイントです。

コールセンターの品質管理において、ミステリーコールやモニタリングの調査を実施すると、個人ごとの評価やセンター全体の品質が数字として出てきます。

当社では、応対品質を評価するのに、評価項目がどれだけ達成できたかをパーセンテージで算出します。

たとえば、各項目を四段階で評価し、◎(お手本レベル)=1点、〇(できている)0.8点、△(不足がある)=0.5点、×(できていない)=0点などの配点をするなら、全項目が〇の場合は80%、全項目が△の場合は50%となります。(※上記点数は、原稿上わかりやすくしています)

評価を実施すると、品質を目に見える形でとらえることができ、応対品質の経年変化や他社との比較、強み・弱みなどが把握でき、品質改善の指標とすることができます。

センター全体の評価を見る際に、よく使われるのが全体の平均値です。品質のご担当者さまからみると、大切なテストの結果のような感じでしょうか。

点数が良かったか、悪かったか、昨年より上がったか、下がったか。全体のレベル感やこれまでからの変化が一見してわかるため、まずはこの「平均値」に注目するのは当然と言えるでしょう。

しかしながら、当社では実際にどのような応対が行われていのか、どのような課題が内在しているのかを把握するためには、平均値のみをウォッチするのでは不十分と考えています。平均値は極端に高い(低い)値に影響を受けやすいからです。

以下の表1を見てください。

モニタリングの運用方法や労力のかけ方は、コールセンターによって、本当にまちまちなのですが、現場の担当者の多くは「業務負担が大きい割に、効果が見えづらい」「センターの管理指標やKPIに入っているため、やめられない」と感じているようです。

しかしながら、こうした現状認識があったとしても、品質管理のしくみにメスを入れるのは簡単ではありません。そのため、課題を抱えながらも仕方なくこれまでの方法で運用をし続けているところも多いのではないでしょうか。

2つの表は、架空のセンターA、Bの品質評価の結果と考えてください。わかりやすいように、コミュニケーターの数は10名、評価結果は5%きざみとしています。

平均値を見ると、センターAが58.0%、センターBが57.5%と、ほぼ同じ値です。ところが、応対品質の内容という視点でみるとかなり違います。

以下の表2に、センターA、Bの得点率の分布を算出しています。これは、たとえば、得点率50%台(50.0%~59.9%)の人が何人いたか、センターでどのくらいの割合を占めているかを示すものです。これをグラフ化したものがグラフ1になります。

これを見ると、センターAでは、30~40%とかなり低い評価のコミュニケーターが半数近くいて、50%台までにばらつきながら分布しており、70~80%の比較的高い評価のコミュニケーターが半数だったことになります。これに対し、センターBでは全員が50~60%台だった、という結果です。

加えて、センターAでは、お客さまのうち半数の方は比較的品質の高い応対を受けられた半面、半数の方はかなり品質の低い応対であり、担当者による「当たりはずれ」がかなりあるということです。

得点率30~40%といえば、かなり低い数字ですから、実際の応対であればお客さまの満足度は「がっかりレベル」なはずです。

一方、センターBでは、70%以上のコールこそありませんが、全員が50~60%台ですから、どのコールもそこそこの品質は確保していたといえるでしょう。いわば、「大きなハズレがない状態」です。

今後の育成という視点からセンターAでは、上位層と下位層では異なる課題を抱えていると考えられるため、全体に同じ指導をするのではなく、レベルに応じた指導が求められます。

こういったケースの場合、スキルの差だけではなく、マインド面が不安定なことも推測ができます。低い層は会社や仕事に対する不満や多忙すぎる現状に疲弊してしまっているケースもあり、それらの仮説のもとに、改めて応対品質を確認します。

また、新人が中・上位層にまとまり、ベテラン層が下位層にかたまっているケースも少なくありません。いずれにしても、上位層、下位層ごとにさらなる分析が必要です。

これに対し、センターBではほぼ同じレベルにあり、同じような傾向・レベルの担当者が多いことが予測されるため、センター全体としてのボトムアップの対策を検討することができます。

さらに、80%以上の高得点コールは、評価項目をかなりクリアできている状態であり、センターとしての「理想」に近いと推測できます。

こうしたコールが実際にセンター内で行われている場合は、お手本が身近にあるようなものですから、他の担当者も何が良いコールなのかを具体的にイメージすることができます。

逆に、レベルの高いコールが身近にない場合、実現すべき「理想のコール」をイメージしづらいと言えます。そういった場合は、全体の底上げを図ると共に、いいコールができる人を育て、コールの現場で理想の応対が聞かれるような対策も検討します。

このように、平均点は同じでも、分布が異なる場合、センターの状況や今後の課題、対策が異なってくるので、「平均」のみに一喜一憂せず、応対品質の良し悪しの両方をしっかりとウォッチする必要があります。

参考になりましたか。

コールセンター・チーフコンサルタント 石橋由佳

サービスのご紹介

コールセンターの応対品質向上のためには、第三者の視点で品質レベルを把握することが大切です。弊社では、事前に設計した綿密な調査計画に基づいたモニタリング調査を実施します。

コールセンターに求められていることは何か?に着目し、センターの「あるべき姿」に向けて、応対品質の改善をお手伝いします。