コールセンターの手作りコミュニケーター情報誌活用
コミュニケーターの心の畑を耕す
コールセンター内の手作りコミュニケーター情報誌活用とは
毎年、数多くのコールセンター様の応対品質や教育をお手伝いしています。仕事のはじまりはクライアント様からのご相談からですが、業務をスタートさせる時に必ず行うのが、実際の通話音声をランダムに数多く聞くことです。
品質評価のときに行うモニタリングシートに沿ったチェックとは違い、このお客さまが、もし自分であったらどう感じるかなといった、そんな視点を中心に聞いてみます。
そうすることで、そのセンターの強みと弱みがわかってきますが、その際、特に着目しているのは、コミュニケーターはどのような気持ちや姿勢でお客さまと接しているのかという点です。
この点は、個別のモニタリング評価ではやや測りづらいものです。正しい日本語で、綺麗な声と笑顔や傾聴のスキルなどをふんだんに活用すると、そのやりとりがどことなく距離感が遠いものであったり、上から目線的な印象を受けたりしても、大幅な減点にならないため、安定した評価結果になる場合もあります。
しかし、品質管理の大きな視点からすると、それではいけません。
たとえ、まどろっこしい説明でたどたどしい場面があったとしても、お客さまにお役に立つ姿勢が十分に感じられるものであれば、お客さまは満足していただけるはずです。
一方で、その逆はお客さまの期待値を越えることができないでしょう。
最近の事例をご紹介しましょう。長年の当社が業務をさせて頂いている旅行会社クラブツーリズム様のコールセンター(原稿内容の許可を頂いています)です。こちらは拠点数が非常に多いことから、センターマネジメントが難しい運営形態です。
にもかかわらず、各拠点の管理者の方々の日々のきめ細かい取り組みや熱意ある人材育成が着実に結果につながっているセンターです。
ここ5年ほど年2回、全国の管理者の方を集って管理者研修を継続的に実施していますが、先日の事例共有の中ですばらしい取り組みがありました。
そのセンターでは、「原点回帰」をテーマに、「旅は楽しい・面白い・美味しい体験がいっぱいできる。そんな想いをお客さまにお伝えし、ワクワクしてもらえているか。まずは自分たちが旅で楽しんだ経験を思い出し、旅のすばらしさを再認識しよう」と考えたそうです。
そして、具体的な取り組みとして、JR九州の「鉄聞」をイメージして、グループごとにオリジナル情報誌「旅暖(りょだん)」を作成したとのことでした。
この手作り情報誌をいただいた時に感動のあまり身震いしたほどですが、コミュニケーターの想いやひたむきな姿勢、グループでワイワイと楽しみながらセンター全体で書き進めた様子が想像できます。
【30ページにおよぶ手作り情報誌】
これらの取り組みは、数値で図るモニタリング結果にすぐには反映されないかもしれません。
しかしながら、コミュニケーターのお客さまとの向き合い方には着実に好影響があり、コミュニケーターもお客さまから真の「ありがとう」がもらえることに結びついていると確信しています。
実施した管理者の方の振り返りでは、旅のワクワク感をイメージして、センター全体で共有したことにより、団結する力、探求していく力を強く感じることができたとのことでした。
管理者研修では、折に触れて、コミュニケーターの<心の畑を耕す>のは管理者の大切な仕事であることを伝え、共有をしています。センターマネジメントは、研修やマニュアル、ルール化などに行きがちですが、このような本質にこだわった取り組みの大切さを、改めて考えさせられた非常に良好な事例でした。
コールセンターの応対品質にはゴールはありません。もっとお客さまに喜んでいただけるためには何ができるか、もっとセンターとして会社に貢献するためには何ができるかを追求し、焦らずに一歩ずつ歩むことが大切なのでしょう。
※本原稿は、クラブツーリズム様の許可を得て掲載しています。
ご参考になりましたか。
コールセンター・チーフコンサルタント 石橋由佳
サービスのご紹介
コールセンターに求められていることは何か?に着目し、センターの「あるべき姿」に向けて、応対品質の改善をお手伝いします。
コールセンターの存在意義や「あるべき姿」を可視化する取り組みです。センターミッションを掲げることで、全体が同じ方向を目指して日々の業務に向かうことができます。