シリーズコラム「メール応対評価」:(3)担当者による対応のばらつき
(3)担当者による対応のばらつき
メールでの問い合わせ対応はテンプレートを使用するため、画一的な内容のものが多い。そう考えている方が多いのではないでしょうか。
確かに、ほとんどのセンターでは効率化と標準化のためにテンプレートが導入されています。担当者は、お客さまの問い合わせに対し最適なテンプレートを選択し、あらかじめ作成された文章の「間(ま)」をつなぎ、必要に応じてカスタマイズを施すというのがスタンダードな流れです。
そのため、どちらかというと決まりきった内容の対応が多く、「ひとりひとりのお客さまに対するメッセージのように感じられない」という課題を挙げるセンターがあるくらいです。
ところが、一方で、まだまだ標準化が行き届かないケースもあります。
通販をメインに店舗販売も行っている某大手食品メーカーA社さまのメール対応品質を調査したときのことです。ミステリーメールでは「商品内容に関する問い合わせ」と「店舗に関する問い合わせ」の2種類のメールをそれぞれ複数、タイミングを分けて送信しました。
すると、その企業から、お客さまへの返信メールは担当者によってかなり異なるものでした。
まず、ぱっと見たときのメールのレイアウトが大きく違っています。改行やかなづかいに気を付けて見やすいレイアウトになっているものの、改行がほとんど入らず文章がずらずらと並んでいるものが混在していました。
最近は個人のメールやブログでも、読みやすいように行間を空けることもされており、そうした気配りに普段から慣れていると、漢字がいっぱいに敷き詰められた文章は、何か違和感を感ずるようです。
リンク先の強調のしかたも人によってバラバラです。細かいようですが、レイアウトはメールの第一印象を左右するため、基本動作として気を遣うものですが、その部分ですら属人的になっていることがわかりました。
さらに、商品内容に関する問い合わせでは、ウェブにも記載されている商品スペックとリンク先のURLを貼り付けただけの残念な返信もあれば、「商品への思い」や「お客さまの声」を脈々と伝えるものもあり、お客さまが受ける印象は180度違うと言っても過言ではありません。
例えば、取扱い店舗の説明も、「百貨店や小売店」とだけ述べているものがある一方で、問い合わせ時に入力した住所(市区群まで)を参考にして、「お客さまのお近くですと...」と具体的な店舗名までを挙げているものがありました。
当然ながらお客さまは、「このメールはわかりづらいけど、ほかの担当者はもっとよい対応だろう」とは思わないでしょう。担当者イコールその会社の代表、というのは電話対応と同じですから、最初の対応がその会社のレベルだと判断します。
わかりづらかったり良くなかったりすれば、その会社や商品へのマイナス評価につながる恐れも十分あるわけです。
分析をすすめていくと、その企業からの返信のなかでテンプレートを使った回答が約7割、テンプレートを使わずに自分のやり方で書いているものが3割という結果でした。
そのセンターにはしっかりとしたテンプレートがあるものの、運用ルールがまだ整備されていないことが推測されます。恐らく対応することに追われて、運用の改善が後手にまわっているのでしょう。
インターネットサービスの事業者などは、お客さまからの問い合わせには極力電話を使わず、メールをメインのツールとして、メール応対専門の大型のセンターを運営しています。それらの企業ではシステムも充実し、経験も豊富なため、こうした初歩的な課題はかなり昔に解決していることでしょう。
一方で、これまでコールセンターをメインに運営してきたセンターは、企業規模などに関わらず、これから本格的な運用がスタートするところも数多くあるのではないでしょうか。
電話よりも標準化がしやすいメール対応ですが、テンプレートを整備し、標準化への対策を講じていても、その運用や細かな部分で思わぬばらつきが出る。コールセンターと同様で、日々のきめ細かい取り組みが重要なことがよくわかります。
コールセンター・チーフコンサルタント 石橋由佳
サービスのご紹介
コールセンターが抱えるさまざまな課題を解決する、業務改善サービス。企業の現状を把握し、着実で効率のよい改善計画の立案・実施をお手伝いします。