コールセンターのプラスマイナス-スパイラル
1.コールセンターのプラスマイナスのスパイラルとは
コールセンターを運営しているが、なかなか品質が上がらない。
世の中に品質の高いコールセンターが多く存在しているものの、一体どうすればあの品質を作り上げるているのだろうか。.と感じているコールセンターの担当の方は、少なからずおられるでしょう。
コールセンターの品質に課題があると思っている。
そのほとんどの場合、そのセンターで働く方たちは多くの苦労や心配を抱えています。
コールセンター自体が何かと苦労の多い職場であることは確かですが、なかでも品質が低いとその負担は担当者や責任者においても非常に重いようです。
各種コールセンターでは、処理ミスやお客さまからのご指摘の発生、スーパーバイザーやコミュニケーターのモチベーションの低下、離職の問題など一筋縄ではいかない課題と日々向き合っていることでしょう。
弊社ではこれまでに数多くのコールセンターの運営や品質の改善に携わってきました。
その業種特有の課題やそれぞれのセンターの持つ機能など、抱えている事情などは実に様々ですが、そうした多くの経験から、今回は「コールセンターにはプラスマイナスのスパイラルがある」というテーマで述べてみましょう。
図にある通り、プラスマイナスのスパイラルは表裏の関係にありシンプルなものですが、現場でのその違いは実に大きなものです。
プラスのサイクルにあるときは、その状態の価値に気づきづらいものですが、ダイエットやトレーニング、または貯金と同じで、よい状態にもっていくには意識も時間も必要な反面、ちょっとしたきっかけで簡単にマイナスの状態に陥ってしまいます。
そして、いったんマイナスのスパイラルに入ってしまうと、コールセンターは目に見えて状態が悪化するものです。
私たちは、そうしたコールセンターのプラスマイナスの起点となるのが「応対品質」だと考えています。
コールセンターの追求すべき数字といえば、「応答率」イコール効率面が第一で、とくに企業やセンターの上層部には、「応答率あっての品質であり、お客さまサービスの視点からは品質が良いことはもちろんだが、それを追求するのは応答率の目標を達成してから・・・」、という考えが根強いことも事実です。
当然、センター運営は莫大な費用がかかることから、センター運営の状態を表す「応答率」は、当然死守すべき数字であることは間違いありませんが、それと同時に応対品質の影響の大きさを常に意識することも重要であると考えます。
2.コールセンターでは課題にすぐ着手できない
コールセンターはどんなに安定稼動していたとしても、日々の活動は常に多忙であり、朝センターがオープンしてから夜クローズするまで、せわしなく時間が過ぎていきます。
そのため、明らかに課題であると感じていることがあっても、変化を伴う改善には二の足を踏んでしまいがちです。
つい先日の話です。
ある金融系企業さんのコールセンターで、インバウンドのモニタリング業務があり、センターのコールブースでしばらく作業をしていました。
その席の近くにたまたまアウトバウンドチームがあり、コミュニケーターさんの声が聞こえてきます。
「なにを目的としたアウトバウンドなのだろう?」と思っていましたが、何本か聞いてもその趣旨がよくわからないのです。
近況のお伺いのアウトバウンドなのか、はたまたこちらからのお知らせが目的なのか、もしくはお客さまの意向確認をしたいのか、もしくはそのすべてをしたいのかがよくわかりませんでした。
そこで雑談レベルでクライアントの担当者様に聞いてみると、「そうなんですよ、スクリプトに少し課題があるんです」と現在使用中の資料をみせてくれました。
コミュニケーターはスクリプトをアレンジせずにそのまま読んでいるだけなのですが、スクリプト自体が実に曖昧な内容だったので、実際の会話も主旨が伝わらないものになっていたのです。
おそらく、お客さまも親切に耳を貸してくださっているのでしょうが、電話を切ったあと「何の用事だったのだろう?」と感じる方もいたかもしれません。
状況を伺うと、業務をアウトソーサーに委託をしていることもあり、皆その不具合を感じつつも、中々改善へのパワーをかけることができないまま、今日に至っているということでした。
実は、このようなことはコールセンターでは決して珍しくありません。
このケースでは、ひとつ大きな課題が潜んでいたようです。
離職率が比較的高めで、人が定着をしないというのです。
スクリプトに課題があることが直接の原因ではありませんが、会話がスムーズに進まないために実績が作れず、なんとなく職場にいるモチベーションが保ちづらいこともあるかもしれません。
また、スクリプトはあくまでもひとつの課題で、同様に顕在化している改善すべき事柄がそのままになっていることが、最終的に離職へとつながっているのかもしれないと感じました。
まさに、前述の「負のスパイラル」の状態です。
3.コールセンターの現状改題:まずは優先順位を見極める
センターを運営している以上、常に高い品質を目指したいものですが、現場の感覚からするとオペレーションを回すことに手一杯で、改善どころではないことも十分に理解ができます。
問題が大きければ、なおさら改善に着手することを、ためらってしまうことでしょう。
したがって、やはり大切なのは、「いまできること」「いますべきこと」を見極めることが必要となります。
まずは、現状の課題の棚卸しをし、それぞれの課題について着手難易度と改善への影響度で整理をしてみると、必ず出来ることが見つかるかります。
たとえ小さなことでも、できることから策を講じて、そこで改善への手応えを得ることができたら、それをきっかけとしてセンター全体の改善への機運も高まるのではないでしょうか。
たとえば、前述のセンターの場合ですと、離職率を抑える、という目標うんぬんはとりあえずおいておき、まずはお客さまとの通話に直接的に影響するスクリプトの修正を手掛けるのがよいと考えます。
スクリプトの修正も決して簡単ではないですが、センター全体で見ればそれを使って全コミュニケーターが会話する時間は膨大なものになります。
そう考えれば、少し無理をしてでも見直すのがよいでしょう。スクリプトの改善は、品質に直結しますから、現場の第一線で働くコミュニケーターへのサポートにもつながるはずです。
長期的にみれば、実績やモチベーションに影響を与え、ゆくゆくは離職率の低減にもなる可能性が高いと考えます。
このように、一つの課題に着手することで、マイナスの連鎖からプラスのスパイラルに転じることは少なくありません。
いかがでしたでしょうか。
難しい課題を抱えているときこそ、思考を止めてしまいがちですが、品質低下の影響を想像し、前を向いてしっかり歩み続けることはコールセンターにとって非常に大事なことです。
参考になりましたか。
なお、弊社はコールセンターのオンライン教育・研修に対応しています。
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コールセンター・チーフコンサルタント 石橋由佳
サービスのご紹介
ここに文章が入ります。こコールセンターが抱えるさまざまな課題を解決する、業務改善サービス。企業の現状を把握し、着実で効率のよい改善計画の立案・実施をお手伝いします。
私たちは、品質調査/品質管理サービスを通じて応対品質の維持・向上をお手伝いしています。企業視点とお客さま視点の双方を兼ね備えており、独自の観点によってセンターに必要な品質レベルを見極めます。