コールセンターとミッション(1)電話応対の品質向上がうまくいかない要因
コールセンターとミッション(1)「電話応対の品質向上」がうまくいかない要因とは
現在、多くのセンターにおいて「電話応対の品質向上」に向けた取り組みが実施されています。電話応対はお客さまと直接相対する大切なコンタクトポイントですから、品質向上は企業にとって重要なテーマと言えます。
ところが、さまざまな施策を行ってもなかなか効果が現れない、というケースが少なくありません。
これにはいろいろな要因が影響しているのですが、大きな原因の一つに、「品質向上」の目指すゴール、つまり「センターのあるべき姿」が関係者全員で共有できていないことが挙げられます。
ひと口に「応対品質を上げる」とか、「お客さまの身になった対応を目指す」と言っても、とらえ方によって大きく異なります。効率を重視することでお待ちいただく時間を減らすという考え方もあれば、お客さまの用件・要望を推測しプロフェッショナルとしてできるかぎりの情報提供をするというのもまた一つの方向性です。
また、傾聴力をもってお客さまの話を聞き、相談相手になるというのも「お客さまの身になった対応」です。
このように、目指すゴールが異なると、重視すべきスキルやお客さまと話をするトーンすら変わってくるため、センターに関わる全員が「センターのあるべき姿」を共有しなければ、マネジメント層が思い描いたイメージの音声(応対品質)になりません。
したがって、全員がぶれないイメージを抱くことができるよう、具体的かつわかりやすい言葉で「あるべき姿」を共有することが大切です。
これがいわゆるミッションです。たとえば、「寄り添い、ご安心をいただけるセンター」「主役はお客さま、そこにプロとしてのお手伝い」などというような具合です。
しかしながら、「センターのあるべき姿」について、管理者間で話し合うことや思いを共有する場がなく、各自が明確なイメージを持っていない、担当者間で微妙なずれがあるといったケースが少なくありません。
そのため、まずは管理者側で「センターのあるべき姿」について意見交換をして明確化したうえで「ミッション」を定めるというステップから始めます。
さらに、定めたミッションを現場に浸透させるには、アドバルーンのように打ち上げただけでは本質的な理解や納得は得られません。現場では日々お客さまと直接応対を行っているため、多くの場合、現状の悪化を恐れて変化に抵抗感を示すこともしばしばです。
そのような中で、ミッションを現場に浸透させるためには、事前に綿密に計画したうえで、まずはSVなどの現場管理者の啓蒙や教育が必要となります。SVの腹に落ちてこそ、真の改善に着手することができるのです。
ミッションに関わる活動は日々の業務と直接関係がないことと、その難しさが容易に想像できるため、どうしても後回しになりがちです。
目指すべきゴールの整理を後回しにすれば、根本的な変化をすることができず、来年・再来年も同じ課題を抱えることが目に見えています。だからこそ、忙しい日々の稼働をやりくりして、できるところから着手することが大切なのだと考えます。
組織が複雑なのでまずはできるところからスタートしたい、いきなりミッションは重すぎるというような場合は、「201○年の目標」などと中期的な取り組みとすることも大変有効です。
とにかく目指すべき山を、一旦決めるようなイメージを抱いてください。
実際、某センターでは、長年にわたって顧客満足度の向上を目指していましたがなかなかうまくいかなかったため、ミッションから見直し、コミュニケーター一人ひとりまで浸透させた結果、1年近くでセンター全体が理想の応対に近づくことができました。
その結果、当然ながらお客さまの満足度も高くなり、「ありがとう」と言われる機会が劇的に増えたと言います。そして、コミュニケーターのモチベーションも高くなり、離職率の低下や第三者評価の向上といった結果につながりました。
「いまの環境の中でまずはできるところから」、というのが実はキーワードかもしれません。
ご参考になりましたか。
コールセンター・チーフコンサルタント 石橋由佳
サービスのご紹介
コールセンターの存在意義や「あるべき姿」を可視化する取り組みです。センターミッションを掲げることで、全体が同じ方向を目指して日々の業務に向かうことができます。
弊社のコールセンター現状診断は、応対品質のみならず、運営面における課題も把握し、顧客満足と事業貢献を両立するコールセンターづくりをお手伝いします。