モチベーションがアップするコールセンターとは?

1.コールセンターは井の中の蛙(かわず)?

コールセンターはよく井の中の蛙になりがちだと言われます。

世の中には、無数のコールセンターが存在し、お客さまからの問い合わせに対応するという意味では極めて似たような仕事をしています。

しかし、他のセンターとの情報交換の場がないことから、独自のやり方で成長を遂げています。

マイナス面として捉えられることが多いものの、決して悪いことばかりではなく、そのセンター特有の強みとなっている場合もあります。

センターによって、設立時の成り立ちや立地によって働く人たちの層も異なり、運営過程において育まれる文化はそれぞれです。

私たちはセンター規模や業種に関わらず、職種柄多くのコールセンターの方と仕事を共にする機会があります。

そのなかで着目しているのが、コールセンターの中で働く人たちのモチベーションです。これは一見してわかるものではなく、実につかみどころがないのですが、センターを知る上では欠かせない重要なポイントです。

目的を持って施策を計画する際にも、モチベーションを考慮しなければなりません。

モチベーションが安定している場合は質の高い計画を立てられますが、そこに課題があれば、モチベーションアップを念頭においた各種プランを推進しています。

2.働きがいと応対品質

あるコールセンターのES調査(従業員満足度調査)の事例をご紹介しましょう。

このセンターは全国に複数の拠点を持つのですが、拠点ごとに強みや弱みが異なります。横断的に安定して運営をするためには従業員満足が不可欠だと考え、定期的なES調査を実施しています。

コミュニケーター向けのアンケートにおいて、「あなたが仕事をする上で大切だと思うポイントは」といった設問では、「人間関係」を最も重視するといった結果が出ています。

また、「職場の人間関係は良好だと思いますか?」の問いでは、「良い」「どちらかといえば良い」の合計が95%を占めた拠点もある一方で、「悪い」「どちらかといえば悪い」が5割近くに達する拠点も存在し、結果は大きく分かれました。

このES調査の結果と応対品質の相関性をみると、密接に関係していることがわかります。

想像どおり、モチベーションが高いセンターの品質は安定し、また上質な応対が一定量として存在します。その逆もまたしかりです。

応対品質においては、コミュニケーターには一人ひとりのお客さまに関心を持ち、親身に接してほしいと考えるセンターも多いことでしょう。

そうした目標を獲得するためには、まずはコミュニケーターが働く意義を感じられる環境を整え、穏やかな人間関係の上で、個々のコミュニケーターに目を配り、きめ細かくサポートすることが大切でしょう。

3.モチベーションアップへの取り組み

先日、ある金融系のコールセンターの新人研修でのことです。研修前に打ち合わせをしていた時のことです。

このような内容の話がありました。

センターマネージャーが目を細めて「みんな、本当によく頑張ってくれているんです。最近、リーダーになったばかりの○○さんが、お客さまから素晴らしいお褒め(おほめ)のお言葉をいただけたんですよ」とそのエピソードを詳しく話してくれました。

その姿はまるで我が子の成長を見守る母親のようであり、多くの生徒を抱える学び舎の校長先生のようでもありました。

また、最近、品質管理担当者と現場SVたちが相談しながら作っているというメッセージカードを見せてくれました。

このハート型のカードは机の上に置くもので、個々のコミュニケーター向けに作られています。

ハートは各コミュニケーターの好きな色で型どられ、一行目にはその担当者がクリアしたい課題、二行目にはそれができたときの素敵な応対が記されています。

さらに、その下にはそれぞれのコミュニケーターにちなんだ挿絵が可愛らしく載せられています。

加えて、2つ目の写真は「お客さまからのありがとう」をいただけた際に、コミュニケーターがハート型のポストイットに内容を書いて貼るものです。

最終的にはびっしりと埋まっていくのですが、センター設立から1枚が完成し、これが2枚目のサンクスボイスのボードとなっています。

このセンターでは以前からモチベーションアップの取り組みが行われていました。
さらに驚かされるのは、数年に渡って継続をしていること。また、その完成度が一段と高くなっていることです。

決められた施策だからやるのではなく、管理者たちが積極的に楽しみながら制作している姿が目に浮かびます。コミュニケーターは私以上にそのことを感じているのでしょう。

4.モチベーションアップは安定的な運営への足場固め

モチベーションに対する取り組みは効果が見えづらく、一見、遠回りのように感じるため継続するのが難しいものです。

その一方で、センター内のよき風土づくりができれば、安定的な運営への足場固めにつながるります。

センターを運営する上で、「こんなことをするとよいのでは?」を思いついた場合は、それがどんな小さなことでも、まずは着手し、良好な反応が感じ取れた場合は、計画をたてて持続的に展開していくのもよいでしょう。

コールセンター・チーフコンサルタント 石橋由佳

サービスのご紹介

長年の経験から得た知見やノウハウをもとに、
「いま」と「未来」にむけた改善をのお手伝いをいたします。

電話応対のトレンドや、コールセンターに求められていることは何か?に着目し、センターの「あるべき姿」に向けて、応対品質を改善します。