コールセンターのモニタリング:学びの場を再チェック 

1.モニタリング・フィードバックの稼働対効果

コールセンター運営において、モニタリングとその後のコミュニケーターへのフィードバックは必須の業務です。

では、それらは何のために各種のコールセンターで実施をされているのでしょうか。

コールセンターのモニタリングは一般的に下記のような目的があります。

1)センターの品質を定点観測することで、現在のレベルや品質の動向を把握するため
2)コミュニケーター育成の材料とするため

このように、センターにとって不可欠なモニタリング+フィードバックですが、実施には多くの時間を必要とします。具体的に、どのくらいの時間がかかるのか、ざっと計算をしてみましょう。

一人のコミュニケーターに対して、1回のモニタリングで必要となる稼働時間は以下のようになります。
1)音声の選定15分間
2)評価30分間 ✕ 2本 = 60分間(2本の音声評価の場合)
3)フィードバック45分間(実施前の準備含む)
合計  約2時間/一人あたり

これを1年間に2回実施する場合は、一人あたり4時間となります。仮に100名のコミュニケーターが在籍していれば、4時間✕100名=400時間とセンターにとって非常に大きな稼働となっています。

モニタリングやフィードバックを自社のリソースで賄うことが難しい場合は、その業務の一部をアウトソースするケースも多くあります。弊社でも、定例業務としていくつかのセンターの作業を承っています。

では、それだけ体力や時間をかけたモニタリングやフィードバックで、果たしてどれほどの品質向上が期待できるでしょうか。実際には計測が難しいため、効果測定が行われていないケースが多いのが実情です。

長年、品質管理の業務に携わってきた経験から考えると、決して効率が良い業務ではないように思います。

応対品質を定期的に観測しKPIに基づいて管理することは、センター運営に不可欠な仕組みのため、効率の観点から論じるべきではないと思いますが、人材育成という点においては他のやり方もあると考えています。

2.モニタリングのフィードバックの目的を再チェック

フィードバックに関しては、目的が曖昧になっているケースがよく見受けられます。具体的には以下のようなケースです。

・個人面談の要素が強く、品質だけでなく効率を含めた総合的な振り返りが中心で、そのなかにモニタリング結果の共有がある。

・モチベーション対策として、不満のガス抜きや意見交換という意味も含めて実施されている。

・フィードバックを何名かの管理者で分担して行っているが、その内容ややり方は各人に任されていて、一貫性がない。

などです。フィードバックは、コミュニケーターと一緒に音声を聞くため、閉ざされた環境で行われることが多いのですが、それが原因で、その時間の実態がつかみづらいという事情もあります。

フィードバックの目的やその時間の内容・進め方の精度が甘い場合は、まずはそれらについて細かく文書にまとめ、フィードバック担当者と共有を図るだけで、底上げをすることができます。

さらにいうと、フィードバックの場を想定したロールプレイングを数回行うだけで、具体的な声かけや伝え方のバリエーションを共有でき、また場の雰囲気づくりなどのマニュアル化しづらい部分を学ぶことができます。

3.フィードバック以外の学びの場と気づきの場

現在、行われているフィードバックの精度アップと共に考えたいのが、フィードバック以外でのコミュニケーターの学びや気づきの場についてです。

フィードバックは年に1〜2回、それぞれ30分間ほどの時間で、与えられる情報は限られています。

何より非日常の空間で実施されるため、決して居心地がよいとは言えず活気のある時間にはなりづらいのです。

それならば、他にもっと有効な手立てがあるのではないでしょうか。

ここであるコールセンターの事例をご紹介しましょう。

そのクライアント様は全国に3拠点を抱える大規模センターです。

こちらでは、運営のしくみを適宜、改善していますが、その一環として、既存のコミュニケーターを対象とした品質向上への仕組みづくりが行われました。

モニタリング+フィードバックに関しては必須な業務であるものの、この時間を通じて品質向上をするには限界がある、という点が課題でした。

そこで、検討を重ねた結果、フィードバックでは時間を少し短縮し、モニタリングの結果と次回への課題ポイントを共有するに留め、具体的な改善の仕方については別途レクチャーの時間を設けることにしました。

また、フィードバックで指導されている内容を整理したところ、モニタリングの全項目が同じ頻度で扱われるのではなく、改善にむけて優先的に扱われる項目がありました。

たとえば、スピードが速い場合は、お客さまとのコミュニケーション上でダメージが大きいため、早急に改善したいものです。

しかしながら、冷たく聞こえてしまう話し方の場合は、それも早期に手当てをする必要があります。

お客さまのご要望がうまく理解できないのに、そこで会話を進めてしまうことも大きな課題と言えるからです。

このように整理してみると、たしかに、体力

このように、優先的に改善したい課題や頻度高く指導が行われている内容を整理し、最終的にテーマごとに束ねて研修のカリキュラムを作りました。

ひとつのテーマにつき、30分間から45分間の研修です。それを学校スタイルで時間割にまとめ、それぞれのコミュニケーターがフィードバックの際に指定された授業を受けるのです。

コミュニケーターによって、1つだけ受講する人もいますし、なかには3〜4つ受講する人もいます。さらに、そこに参加すると、同じ課題を抱えた人と学習を共にするため、他の人の話し方を聞くことにより学びを深めることもできます。

また、そこに「参加希望制度」という仕掛けを導入しました。

コミュニケーターひとりにつき、希望があれば3つまで授業を受けることができるのです。

基本スキルである「オープニングとクロージング」をいま一度学びたい人、上級スキルの「傾聴と共感」を学習したい人など、それぞれが希望を出して受講をするのです。

各授業には、苦手意識を持った人だけでなく、自らの意思で参加をしている人が集うため、学習の場が能動的で前向きな雰囲気になりました。

このように、学びの場を一つにすることで、担当者によるバラツキをなくしてフィードバックの品質を均一にするとともに、品質管理の稼働削減も実現しました。もともとの目的である品質向上についても、目に見える成果を得ることができました。

4.モニタリング+フィードバックをゼロから考えてみる

コールセンター運営のなかでも、とりわけモニタリング+フィードバックは過去からのやり方が引き継がれ、改善のメスが入りづらい業務です。

しかし、冒頭で述べたように非常に多くの体力と時間を要するため、ぜひ一度、そのあり方を見直してみるのはいかがでしょうか。

改善を検討する際は、既存のやり方にとらわれ過ぎず、ゼロから柔軟に構想を練ってみると何かよい方法が考えられるかもしれません。

センター規模が大きい場合は、最初はトライアルで小規模で試してみて、その有効性を探り、またその経験を活かして業務をブラッシュアップしてからセンター全体に展開するのもよいでしょう。

いかがでしたでしょうか。モニタリング+フィードバック、今後の改善のお役に立ててれば幸いです。

参考になりましたか。

コールセンター・チーフコンサルタント 石橋由佳

サービスのご紹介

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