コールセンターにおける効率と品質は天秤にかけるべきか?

1.コールセンター運営における3つの要素

どのコールセンターにも繁忙期という期間が存在します。短いサイクルでいえば、休み明けの午前中や請求関連など各種の書類が発送されるタイミングで問い合わせが増えます。

一年を通してみると、金融機関などは、年末調整の書類が一斉に発送される時に入電が増えるので、その時期に向けて人の採用含めると数ヶ月前から備えています。

その他、通販系の企業などは、広告やプロモーションへの反響による繁忙期というものがあります。

その状況の中、重要なポイントの一つとして、コールセンターは応答率を1%でもあげるべく、もしくは1%でも目標を下回らないように、あらゆる手立てと努力を重ねることが求められます。

日本のコールセンターの多くが応答率至上主義で運営されていることについて、業界内でもたびたび論議されますが、実際問題として最も優先すべきことは達成目標であること。これは変わりようがないのです。

目標の応答率を死守するべく、コールセンターはパフォーマンスを上げるところがほとんどです。

かつて、筆者がコールセンター業界に初めて足を踏み入れた25年ほど前は、いまのように品質やコンプライアンスという当たり前の視点はなく、効率をいかにあげていくかを求められていたものでしたが、現在では、効率、品質、収益性といった様々な視点での運営が求められています。

2.効率と品質はいわば天秤の関係なのか?

そうした状況においても現場の多くの担当者は、効率と品質の問題は常に頭の中にあることでしょう。

「今は忙しいから(効率優先の時期だから)、品質は一旦おいておこう」と運営を効率重視型に切り替え、最前線のコミュニケーターは現場管理者のその指示に従い活動します。

しかし、効率重視の時間を一定期間過ごした後、一旦下がってしまった品質をなかなか元に戻せないことがあります。

効率は管理者の働きかけですぐに成果として現れてくることも多いのですが、品質は一度下がってしまうと、元に戻すのには時間と労力が必要になります。

確かに、お客さまの真のニーズの汲み取って対応したり、詳細なヒアリングによる個別提案したりと、顧客満足に好影響を与える活動は、やればやった分だけ応対時間が長くなり、かつ効率も下がることでしょう。

より高いCSや品質を目指した結果、効率が下がるといった、この図のような天秤状態になることも多々あります。

ただ、筆者が多くのコールセンターのモニタリングを通じて言いたいのは、実は効率を下げることなく、一定の品質を維持することも十分可能ということです。

お問い合わせへの「ありがとうございます」を無機質に話すのも1.5秒、きちんと気持ちを込めて話すのも1.5秒。

事務的な雰囲気で話すのも、笑顔で話すのも通話にかかる時間は同じです。

このように、通話時間(効率)に影響することなく品質を維持することができるスキル(技術)が存在するのです。こうしたスキルは常に意識しておきたいものです。

当社がコールセンターで現場指導を行う際は、「忙しいけど、笑顔のある声や抑揚は大切にしましょう」と声をかけています。

そのふたつの有り無しで品質が大きく変わるからです。このどちらのスキルも使わずに話してしまうと、どうしても事務的な印象が残り、お客さまの反応も悪いため、ただでさえ忙しいこともあって疲弊のスピードが加速します。

忙しいなかでも、笑顔と表情の豊かさがあれば、お客さまからは温かいお声をかけてもらえることもあり、手応えを感じるチャンスが増えるのです。

忙しい時期だからこそ、それらのスキルはキープしておきたいのです。

3.最後に

いかがでしたでしょうか。品質と効率は天秤の関係にあると判断し、品質を軽視しすぎることは、様々な面でリスクがあると判断してもよいでしょう。

たとえば、
会話が無機質になると

お客さまの反応が悪くなる

そうすると、会話全体がスムーズに進まなくなり

コールの目的が達成しづらくなる

最終的にお客さまの満足が得られない(場合によっては、ご指摘が発生する)、といったマイナスのスパイラルになることは現場で感じたことがある人は少なくないでしょう。

これはいくら忙しい時期とはいえ、コールセンター業務では出来れば避けたいものです。

先日、あるコールセンターの定例の品質会議で、ひとりの担当者が『最近、SVが「急いで!」と言いすぎてしまい、反省しています』との発言がありました。

つい出てしまいがちな言葉ですが、事前にその指導が与える影響に思いを巡らせることができれば、少し違った声かけになったのではないかと思いました。

コールセンターにおける効率と品質のバランス、これは永久の課題なのかもしれませんが、決してできないことではなく、根気よく修正する気持ちと実行力が、現場をより良くしてくれるのかもしれません。

参考になりましたか。

コールセンター・チーフコンサルタント 石橋由佳

サービスのご紹介

コールセンターの応対品質向上のためには、第三者の視点で品質レベルを把握することが大切です。弊社では、事前に設計した綿密な調査計画に基づいたモニタリング調査を実施します。

コールセンターに求められていることは何か?に着目し、センターの「あるべき姿」に向けて、応対品質の改善をお手伝いします。