ミステリーメールにおけるステップ手順とその実施ポイントとは
ミステリーメールにおけるステップ手順とその実施ポイントとは
競合各社の電話応対を比較し、自社の応対レベルが業界の中でどの水準にあるかを検証するのがミステリーコールですが、メールでも同様に、ミステリーメールを実施することで、業界内でのレベル把握や他社の動向を調べることができます。
ミステリーコール同様、ミステリーメールも目的に応じた調査設計とそれに基づいた手順で実施することにより、様々な結果を得ることができます。
各社へのメール送信の条件を合わせるのが基本ですが、当社で実施しているミステリーメールのステップ手順とその実施ポイントを基本に解説します。
1)シナリオの策定
ミステリーメールに際しては、まず、問い合わせシナリオを検討します。調査目的に照らして知りたい事柄がわかるようなシナリオにするのが基本です。このとき、少しひねった内容や難易度の高い問い合わせにするのではなく、自社センターによく送られてくる頻度の高い問い合せ内容にしましょう。
一般的な問い合せの対応こそ、そのセンターの応対の品質を代表するものなので、センターの応対品質を知るためには「よくある内容」が適しています。
また、あまり特殊な問合せですと、複数のアドレスから送ったときに調査を実施していることが相手方にわかってしまう可能性があります。また、既顧客への対応がどうなっているかを調べたい場合は、事前に商品購入をして、調べる先に顧客データとしての登録をしておくことが必要となります。
2)調査本数の設定
調査には、同一のシナリオについて少しずつ表現を変えた複数のメールを送信して結果を比較します。この点は、ミステリーコールと同様です。一つのシナリオにつき5本程度で、2〜3本のシナリオが確保できると、結果のブレが少なくて済みます。
傾向を見るという点で、できれば1社につき20本程度はあるとよいでしょう。
3)スケジュールの策定
調査の設計にもよりますが、メールによる問い合わせは、一往復(問合せと返信)で終了する場合と、複数回のやりとりが発生する場合があります。加えて、商品を購入したうえで、購入商品についての問合せなどが分析対象になる場合は、購入にかかる期間も含めたスケジュールの検討が必要です。
いつごろまでにメールのやりとりを終了したいかを想定して、メールの発信日時を設定するようにします。
メールの授受に関しては、メールボックスだけで管理するとわかりにくくなるので、商品購入や問い合せメール発信から、最終的な返信を得るまでの一連の流れを確認できる、ドキュメントを用意すると良いでしょう。
4)発信元アドレスの準備
電話の場合は184をつけた非通知設定でミステリーコールをかけることがほとんどです。
しかしながら、メール調査の場合はメールアドレスがないと連絡をすることができないため、送信元のメールアドレスを準備します。
調査のメール授受には調査担当者の業務用アドレスなどではなく、専用のアドレスを用意することが望ましいです。フリーアドレスを取得して調査に使用する方法もありますが、近年はフリーアドレスの取得に電話認証等が必要になることが多く、思ったよりも手間がかかるなど、個人情報が必要になります。
調査本数を多くすると、メールアドレスを作成するのに手間がかかり、実施が煩雑になるので注意が必要です。
5)発信者の人物像の設定
メールの文面にも問い合せをした方のパーソナリティーは現れます。単に事務的に用件を伝える方、丁寧で長い文章を書く方、話し言葉でメールを書く方など、いろいろなタイプがあります。
調査の際にも、ある程度送信者の人物像を設定し、問い合わせメールの文章を作成します。こうすると、会社によっては、同一の内容の問い合わせでも相手の方のパーソナリティーによって対応が違ったりします。
6)問い合せの実施(メール発信)
すべての準備が整ったら、対象のセンターへ問い合せをします。このとき、ウェブサイトの専用フォームから問い合せをする場合も多いので、問い合せをするだけでも会員登録が必要なケースも含めて、事前に調べておきましょう。
7)送受信履歴のまとめ&返信内容の分析
問い合せを実施したら、各センターからの返信が出そろうのを待って、返信内容の分析を行います。
ミステリメールの応対内容の評価については、返信までの時間と返信内容が二つの大きな軸になります。
返信までの目標時間は、センターによってさまざまな目安がありますが、一般的に24時間以内としているセンターが多いようです。
ただし、センターによっては、「土日祝日にいただいたメールは、翌営業日以降にお返事をさせていただきます」などとお断りをしている場合もあります。
ユーザー側でもよほど緊急の用件でなければ、何がなんでもすぐに連絡が欲しいというものでもないので、ビジネスアワーの問い合せなら翌営業日程度でも差し支えないのではないか、というのが当社の見解です。
返信内容の評価項目は、各センターさまざまな基準を設けていると思いますが、弊社では、大きく「ベースの評価」と「個別対応の評価」に分けています。
メール対応は、テンプレートを使うのが主流ですが、電話のスクリプトと異なり、テンプレートをコピー&ペーストしてそのまま使うことも多いので、テンプレート自体の良し悪しは、個々のコミュニケーターの技量や工夫に由来するものではない、というのが当社の考え方です。
たとえば、オープニングやクロージング、ヘッダなどは明らかにテンプレートとわかる部分で不自然な表現などがあった場合、それを「コミュニケーターのスキル不足」とするのは少し違うのではないか、ということです。
そこで、テンプレート部分を評価するのが「ベースの評価」です。
これに対して、そのメール固有の部分の良し悪しは担当者のスキルによって決まるので、それは違う枠組みで評価します。
これが、「個別対応の評価」です。
「個別対応の評価」の具体的な項目は、センターの目指す応対やスキルのレベルによって設定します。大まかな内容的に説明すると、(1)メールの印象、(2)メールに必要なスキル、この二つのグループに分かれます。
(1)では、メール全体から受ける印象を評価します。(2)は、誤字脱字や文法上のミス、レイアウトなど文章作成のメール作成における基本スキルから、「メールの主旨が伝わりやすいか」などといった項目まで多岐にわたります。
返信メールにおいて、どこがテンプレートなのか、そうではないのかは、各社に確認することができないため、あくまでも想定で判断をしていくことになります。
それでも、「ベースの評価」と「個別対応の評価」をわざわざ分ける理由としては、テンプレートでの対応部分を評価全体に組み込むと、そのほとんどの応対が高得点を得てしまい、細かい差が発見しづらくなるためです。
電話応対と同様、メール応対でも各社の応対方針と品質レベルは如実に結果に現れます。顧客重視を売りにしている企業がメール応対では意外にスピード重視で事務的だった、というようなこともあります。
また、コールセンターと同じ方針でメール応対をしている企業、全く別組織でメール応対をしているだろうと推測されるケースなど、運営の違いも垣間見ることが出来ます。
メール応対は、電話応対よりもまだまだ業務の歴史が浅く、どんな応対がお客さまに支持されるのか、それに対して企業としてどのくらいパワーをかけて対応するのが適切なのか、どのような教育や品質管理をするのがいいのか、といったことも一般論で語れるレベルには至っていません。
また、そのような状況の中で、チャットでの問い合わせ対応やLINEなど、各種SNS対応と新しいメディアが出てくるスピードの方が速く、手探りで運用しているセンターが多いのも現実です。
しかし、そうは言っても、電話と同じように顧客満足に大きな影響があることも確かで、トライ&エラーを繰り返しながら、あるべき姿を模索していくのが、顧客対応業務と考えています。
そのためには、まずは自社と競合他社、業界の動向を把握することが大切で、そういった観点から一度チェックしてみてはいかがでしょうか。
参考になりましたか。
コールセンター・チーフコンサルタント 石橋由佳
サービスのご紹介
弊社では、品質調査/品質管理サービスを通じて応対品質の維持・向上をお手伝いしています。企業視点とお客さま視点の双方を兼ね備えており、独自の観点によってセンターに必要な品質レベルを見極めます。
覆面調査により応対品質を把握します。自社のセンター調査だけではなく、同業他社との比較をすることで、業界全体の動向も把握することが可能です。