コールセンターにおけるアウトバウンドの品質管理について

コールセンターにおけるアウトバウンドの品質管理について

弊社はアウトバウンドの教育・研修等業務も豊富な経験量があり、アウトバウンド含めた既存顧客様へのセールス系コールのご相談を多くいただきます。

先日もコールセンターのビジネスショーの一部で開催された『実践!アウトバウンド講座』で講師を務めました。

こちらは公開型講座のため、様々な業種や企業からのご参加でしたが、講座の冒頭で「アウトバウンドは品質管理をしていますか?」と質問をしたところ、2割程度がYESに挙手をされました。

Noと回答したセンターはいずれも大きな企業のため、インバウンドセンターではモニタリングによる品質管理は徹底されているとのことでした。

お客さまからすると、インバウンドもアウトバウンドも関係なく、その企業の電話応対のはずですが、なぜこのようなことが起こっているのでしょうか。

通常、アウトバウンドは「電話をかけた件数」、「対象者と話せた件数」、「アポイントや資料請求などの目的が達成できた件数」が管理対象となっています。

コミュニケーターも、「何件かけたか」「何件獲れたか」で管理されているため、品質よりも効率や結果を重視します。

そのため、お客さま側からみると、心の感じられない案内を一方的に聞かされ、普段考えてみたこともない質問を急に投げかけられ、戸惑うこともあるでしょう。

アウトバウンドのコミュニケーションはそもそもお客さまにはニーズはありません。またコールセンターの都合で電話をするため、お客さまにとってはあまり都合のよくないタイミングもあります。

本来であれば、アウトバウンドはインバウンドよりも、最大限の気遣いや配慮をしながらお話をする必要があるにも関わらず、最低限の品質管理さえされていないことが多いのです。

コールセンターの品質を知りたい場合は、インバウンドセンターの場合はミステリーコールをすれば、その業種や企業の応対品質を測ることができますが、アウトバウンドに関してはそうはいきません。

いつかけてくるかわからない電話を待ち、自宅で録音をする必要があるため、なかなかアウトバウンドコールを録音することは難しいものです。

弊社のスタッフの自宅には、いつアウトバウンドがかかってきてもいいように録音装置を準備していますが、それでも年間に録音できるコールは数本で、その実態はなかなかわからないものです。

余談ですが、以前に某通販企業さまからのご依頼で、競合他社のアウトバウンドの実施状況を調べるために資料請求や商品購入をして、そのフォローコールを待って録音をするという業務がありましたが、そのときは全く電話がかかってきませんでした。

弊社でこれまでに録音することのできたアウトバウンドコールを聞き返すと、その品質はインバウンドとは大きく異なるものばかりです。インバウンドでは一定の品質を保っている企業でも、アウトバウンドの品質はかなり低いことも珍しくありません。

とくに金融機関からのアウトバウンドはその傾向が強いように感じます。

私個人の経験でいえば、社会人になったときから長年利用している都市銀行から、時々アウトバウンドがかかってきますが、それは驚くほど雑な応対で、何度か電話を受けているうちに、その企業へのイメージが悪くなっています。

その証拠に徐々に他の銀行の利用が多くなっています。

アウトバウンドで顧客のロイヤリティを失っても、企業はそのダメージを数値で測ることはできません。大切な顧客データを少しずつ傷つけながらセールスを展開しているのです。これは企業の活動としては非常に危険なことだと考えます。

やはり、アウトバウンドもインバウンドと同様にしっかりと品質管理をすべきでしょう。

また別の視点から考えてみたいと思います。「もっとアウトバウンドの成果をあげたい」といったご相談を受け、コンサルティングを開始する時には、まずはコールをモニタリングします。

そこから導かれる課題はいくつかあります。

・スクリプトが適切でない
・コミュニケーターのマインドがお客さまに向いていない
(お客さまにとってのご案内といいつつ、企業のための電話であると強く感じる)
・コミュニケーターの話し方がよくない 等々

コミュニケーターからするとなかなか話を聞いていただけないお客さまが多い中、断られる前になるべく多くを話したいという気持ちから、早口になったり、お客さまの声にならないニュアンスを察することなく話し続けたりといったことが起こります。

そのため、お客さまからすると一方的に話をされている感覚が強く残るのです。


このような課題が確認された場合、コミュニケーターには、親しみや笑顔のある話し方/ゆったりとした話し方/配慮や気遣いの言葉かけ/傾聴や共感などの基本的な教育を行います。

また、アウトバウンドセンターの場合は、コミュニケーター自身が自分の応対をモニタリングする機会が少ないことも多く、その場合はまずは自分たちのコールを聞いてもらい、「これが自分の家に突然かかってきたら、どう感じるか」とお客さま視点で振り返ります。

アウトバウンドでセールスの成果をあげたいのであれば、コミュニケーターは感じよく話せることが大切で、それにプラスしてスクリプトを見直すことにより、会話全体としての精度をあげるのです。

アウトバウンドが品質管理されない一因としては、インバウンドセンターとアウトバウンドセンターが縦割りになっていることも多々あります。

しかし、どちらも同じようにお客さまに大きな影響があることを踏まえ、それぞれに合った品質管理や教育を行っていくことが最も大切でしょう。

参考になりましたか。

コールセンター・チーフコンサルタント 石橋由佳

サービスのご紹介

コールセンターの中でも大変難しい業務であるアウトバウンド。細かい数値分析を元に業務を精緻化することで、確実に成果を獲得できるようお手伝いします。

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