病院・クリニックも電話応対が重要

1. 電話は病院・クリニックの窓口

コロナ禍を経て、飲食店やイベントなど事前の予約が必要になる場面が増えた、と感じている方は多いのではないでしょうか。

とりわけ病院・クリニック(以下、病院とします)では、完全予約制ではなくても、予約がメインの医院が増えました。風邪症状に関しては、来院する前に電話での問合せを求める医院も依然として数多く存在します。そのため、病院に行くときも「まずは電話」が主流となっているのです。

その際、電話応対が良好であれば、病院の第一印象が良くなり、来院の可能性が高くなります。逆に、その時の応対いかんでは患者が別の病院に行ってしまうケースもあるのではないでしょうか。

昨今では、病院の口コミを掲載するサイトやGoogleでも多くの口コミが掲載されていますが、治療の内容や医師の技術だけでなく受付の対応についての書き込みは非常に多く、その医院の電話の対応も「満足度」左右する重要な要素であることがわかります。SNS全盛の世にあっては、いったん悪い評判が広がると経営に悪影響を及ぼしかねません。しかしながら、電話応対にも気を配っている医院はまだ少数派かもしれません。病院の電話応対でよく見られる残念な応対は以下のとおりです。

(1)電話がなかなかつながらない:
問合せと診察の予約を同じ番号で受ける場合、電話をかけてから応答するまでの待ち時間が長いことがあります。特に、予約開始時間や患者が集中する時期などはその傾向が顕著です。インターネットでの予約受付を実施するなど対策を検討する必要があります。

(2)事務的で好感が持てない:
病院に電話をする場合は、本人もしくは家族の体調が悪い時であり、心配な気持ちを抱えるケースがほとんどでしょう。にもかかわらず、そっけない様子で話をしたり、淡々と事務的な受け答えをすると、電話をかけてきた人をよけい不安にさせてしまいます。たとえ冷たい態度の担当者がごく一部だったとしても、そうした応対に遭遇した人は、「この病院はやめよう」と思うかもしれません。

私ごとですが、先日、地元の病院を探していたときにみた口コミで、『はじめて電話をしましたが、受付の人が塩対応すぎて、イヤな気分になりました。あえてそんなところに行く必要もないので別の病院にいきます!』とのコメントがありました。私もそれを読んで他の病院を探したこともあり、同じような人は多いようにも思います。

(3)説明がわかりづらい:
電話での問い合わせに対して、正確な回答ができない、あるいは担当者によって回答の内容が異なるケースです。患者が必要な情報を得られないと、不安や混乱が生じ、その医院自体に対する不信感につながりかねません。

2.病院・クリニックでも電話応対に磨きをかける

病院・クリニックの電話応対においては、以下の点に注意して研修や勉強会などの教育を行うことが有効です。

(1)寄り添う姿勢:
患者や来院者の状況や感情を理解し、共感を持って対応することが重要です。病気や健康に関する問題に直面している人々は何かしら不安を抱いているケースが少なくありません。そうした方々の気持ちに寄り添うような対応が求められます。

(2)感じのよい話し方:
どんな業界でも共通ですが、電話応対においては相手によい印象を与えることが重要です。それには、電話での挨拶や話し方・声のトーン、丁寧な言葉遣いなど、基本的な電話応対マナーを徹底します。相手が電話の向こう側にいることを意識し、親切かつ丁寧に対応することが大切です。

(3)適切な説明:
患者や来院者からの問い合わせに対する回答(提供する情報)も大切なポイントです。あやふやな説明をする、担当者によって回答が異なるといったことがないようにしましょう。病院のサービスや受診の手続き、医師の予約状況などについて、応対する担当者が適切に説明できるようにする必要があります。季節的に問合せが多い案件(季節性の疾病や予防接種など)については、常に情報をアップデートし、正確かつ明確な説明ができるようにしておきましょう。

また、教育に加え、電話応対の際に使用するツールを整えるのも良いでしょう。たとえば、電話をいただいた際の流れをフロー化するなどです。オープニングの挨拶のあと必ず用件の復唱をする、復唱の文言をルール化する、症状についての質問項目をあらかじめ決めておくといった具合です。こうすることにより、会話の流れが整理されると同時に適切な案内ができるようになります。また、「それはご心配ですね」「お気をつけていらしてください」など、とっさには思いつきづらい「ちょっとした声かけ集」を作成しても良いかもしれません。

これらの点を含めて、担当者が電話応対において十分な能力を発揮できるような教育プログラムを設計し、定期的なトレーニングやフィードバックを行うことが重要です。

電話応対がますます重要性を増すなか、医療の質だけでなく電話応対の品質についても気を配りたいものです。当社では、医療機関向けの電話応対の教育プログラムも実施しています。気になることがあれば、いつでもご相談ください。

コールセンターコンサルタント 古館良子

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