コールセンターのご高齢お客さまへの電話応対は
1.コールセンターとご高齢のお客さま
弊社では日頃からコールセンター向けの研修を数多く行っています。
その際、業務で困ったことや疑問をクライアント・受講生と共有するのですが、よくある質問のなかに「最近、高齢のお客さまからの電話が多いのですが、話が長くなったときにどうすれば電話を切ることができるでしょうか。」といったものがあります。
それには、他の受講生も大きくうなずき共感を示します。
それらの場面に対して、こちらから電話を切ることはしないため、残念ながら万能な対処方法がある訳ではありません。
会話が本題からそれた場合はやんわりと話を元に戻す、余談には積極的には参加しない(けれども、冷たい対応をするのとは違う)ための術(すべ)を知っておくことぐらいでしょうか。
コミュニケーターとしては、会話が長いだけでなく、難易度も高いため、苦手意識が強いようです。
たしかにモニタリングをしていると、その傾向があることは事実です。
ご高齢のお客さまとの会話には、細かいエピソードが添えられ、同じ話が繰り返されるといったシーンがよくあります。
先日、某生命保険会社さまのコールセンターで高齢者応対の実態を調査する機会がありました。
お客さまからの質問は「いま入っている保険はどんなもの?」といったシンプルなものが多かったのですが、その際、保険に入った時期や経緯、その間の病歴などを細かく話してくれるのです。
また、解約返戻金の金額についての問い合わせでは、「今、お金に困っているわけじゃないのよ。誤解しないでね、大丈夫なんですから」と繰り返しお話をされる方もおられます。
それらの話が長くなると、対応するコミュニケーターは時間がかかっていることに意識が向かい、徐々に傾聴や寄り添いよりも、なんとか早く電話を終えることができないかと、少しもどかしくなるのです。
2.どんどん進む!お客さまの高齢化
我が国の総人口は減少傾向にあります。
その一方で、65歳以上の高齢者人口は過去最多を更新し、総人口に占める割合は約3割を占めるそうです。
また、この先しばらくは、その割合は増えていくことが見込まれています。※総務省2019年9月15日現在推計データより
3人に一人が高齢者という社会において、今後、コールセンターはどのように対応していくのがよいのでしょうか。
高齢者の立場からコールセンターをみると、電話をして最初につながる自動音声応答(IVR)によるプッシュボタン操作が難しく、その時点で諦めてしまうこともあるようです。
加えて、電話が混み合っている場合に、若年層のようにスピーカーモードにしてつながるのを待つということをしないためか、「全然つながらない!」とのご不満を口にされます。
そのような背景もあってか、ここ5年ほどの間に高齢者専用の電話窓口を設ける企業も出てきました。
中でも業種としては金融機関が多いように見受けられますが、金融の場合は手続きのほとんどは書類でのやりとりとなります。
それらは記入項目が多く、また用語も難しいため、お客さまへのフォローが必要となるからです。
3.コールセンターの高齢者応対は実に難しい
当社のコールセンター向け研修に「ご高齢のお客さまとの電話応対」といったメニューがありますが、ここ数年においては実施頻度が高いものです。
ここからも、いかにコールセンターが対応に苦労しているのかが伺えます。
それではここから、高齢者の特徴を見ていきましょう。
以下は、高齢化に伴う変化の一部ですが、コールセンター応対に影響する順に並べます。
・聴覚の低下(聞こえづらい、言葉として捉えづらい)
・視覚の低下(見えづらい、文字や記号が捉えづらい)
・理解力、判断力の低下(理解や判断が難しくなる、時間を要する)
・記憶力の低下(短期記憶の低下により、いま見た・聞いたことが頭に入りづらい)
・コミュニケーション能力の低下(会話力や意思疎通、感情の把握がうまくできない)
・忍耐力の低下(忍耐力や客観力が弱まり、感情のコントロールが難しくなる)
・気力、意欲の低下(やる気がでない、疲れやすい、持続することが難しくなる)
・体力の低下(筋力や持久力(行動体力)、体温調節、免疫力(防衛体力)などが難しくなる)等
コミュニケーターのなかには、ご高齢のお客さまから厳しい口調でストレートに不満を言われた経験を持つ人も多く、それらが苦手意識につながっていることもあるでしょう。
あまり好きな言葉ではありませんが、数年前から「シルバーモンスター」が話題になっていますが、これらも高齢化に伴う忍耐力の低下も原因のひとつだと言われています。
4.電話応対における高齢者応対に必要なこととは
コールセンターにおいて、どのように高齢のお客さまへの応対をするのがよいのでしょうか。
まずは、心構えが重要です。
高齢のお客さまとの対応は、その他の層とはコミュニケーションの質や時間軸が異なることを前提とします。
問い合わせ内容にいくつかの種類が存在するように、お客さまの一つの層として捉えておくのがよいでしょう。
一方で、相反することのようですが、ご高齢のお客さまに対して年齢などによる先入観を持ちすぎないことも重要です。
前述の各種の衰えがまんべんなく出てくるのではなく、お客さまによってはただ耳が遠いだけで、理解力や判断力は若者と変わらない方もおられます。
会話が実にスムーズに進んでいたかと思っていたら、さっき話したことがすっぽりと記憶から飛んでいることもあります。
結局のところ、おひとりお一人のお客さまの多様性を認め、加齢に伴う様々な変化に配慮することが求められるのです。
また、心構えと合わせて、応対に必要な技術やフレーズを持ち合わせておくことも大切です。
まずはどのような場面において会話が滞るのかを知っておくと、対処方法が明確になります。
一例をあげると、カタカナや専門用語、数字などが捉えづらいのですが、そうであれば、大きな金額などを言う際には「まずは数字をならべて、ゆっくり言いましょう。
<・・に、さん、ご、はち、きゅう、ぜろ・・>で、235,890円です。」と言うと意外に簡単に対応することができます。
当社の「ご高齢のお客さまとの電話応対研修」では、高齢者応対の特徴から、心構え、応対の仕方を学びます。
もし、高齢者の割合が増えてきた、コミュニケーターが苦労している、苦手意識が強いなどがありましたら、ぜひ一度お問い合わせをいただければ幸いです。
コールセンター・チーフコンサルタント 石橋由佳
サービスのご紹介
ご高齢のお客さまにも満足いただけるスムーズな会話の運びや、感じのよい応対を目標に学習します。オリジナルテキストやロールプレイングを取り入れた実践型トレーニングです。