BtoBコールセンターのコミュニケーター最新研修事例
今回はBtoBコールセンターのコミュニケーター最新研修/教育事例として、ある外資系IT企業様の実施事例を述べさせて頂きたいと思います。
そのクライアント様はクラウド環境で構築可能なソフトウエアを、多岐にわたって提供されています。
現在、製品を提供する上で重要となるサポート業務については、コールセンターで経験豊かな専門担当者を配置し対応をしています。
1.クライアント様の課題
クライアント様は、当初このように考えていました。
電話応対のスキルについて少しは課題があると感じていましたが、一般的な電話応対の基礎学習については、とくに必要性を感じていなかったのです。
コールセンターの担当者も、そこで対応する人達は知識面においては問題がなく、お客さまのご要望に対しては優れた案内ができており問題解決に至っているとしていました。
窓口の特性上、会話がネガティブな状態でスタートすることが多く、それに対してうまく対応できずにクレームにつながっていると考えていたようです。
そのため、クレームに特化した研修を実施したいとのご希望でした。
2.boosterからの提案
当社のコールセンター研修はカスタマイズをして行います。
「クレーム応対研修」と一言で言っても、業種やお客さまのご要望、会話の広さや深さ、深刻度などによって内容は様々です。
せっかく研修に投資をする以上、それに見合った効果が期待できるようにきめ細かく準備をしていきます。
今回のケースでは、カリキュラム検討にあたって、まずは現在の応対傾向の把握と目線合わせをするため、企画担当の方と一緒にランダムにモニタリングをすることをご提案しました。
同時に、クレームになってからの対応方法を学ぶよりも、クレームを出さないための学習が有効な場合が多いこともお伝えをしました。
始めに、コールセンターの応対の状態をしっかりと確認し、その上で、どのような学びの場にするのがよいかを見極めるのです。
(最近では「クレーム」とは言わずに「ご指摘」と表現することが多くなりましたが、本コラムでは「クレーム」で表現統一をしています)
3.コミュニケーターによるコールの現状
クライアントさまとモニタリングをした結果、いくつか大きな課題が見えてきました。
一点目は、これまでコミュニケーターは自分の応対とあまり向き合ってこなかったため、自身の話し方や内容がお客さまにどのように聞こえているかが把握できていなかったことです。
迅速な解決を意識するあまり、コミュニケーター主導で会話が展開され、無事に問題が解決してもお客さまの理解や納得がいまひとつ得られていないケースが多いこともわかりました。
二点目として、問い合わせ内容が標準化しにくい固有のケースであるため、スクリプトを作成しておらず、すべての会話が担当者個人に委ねられていることから、説明内容および応対品質のばらつきにつながっていることも明らかになりました。
例えば、ネガティブなことを伝えなければならない場合のトーク(会話の内容)が整備されていないために、説明が回りくどくてわかりづらい、また、その逆であまりにも単刀直入に話してしまうため、気遣いが足りていないように聞こえるなどの問題が発生していました。
具体的には、コールセンターの受付時間終了が迫っている際、サポートをスタートさせてしまうと時間外に大幅に食い込む可能性があるため、担当者は明日の対応を提案するのですが、うまく説明できないために不必要にお客さまのお怒りを買ってしまっているなどがありました。
4.研修カリキュラムの検討
今回の研修の企画から実施までの流れは以下の通りです。
モニタリングから導き出された課題をもとに、研修カリキュラムを検討しました。
弊社からは(1)受講生である担当者は研修前に自分の応対としっかりと向き合う機会を持つ、そこからの気づきを得てから研修に参加する。
(2)SVのような育成を担当する人が不在だったため、研修後すぐに自分の慣れ親しんだ話し方に戻ってしまう危険性があり、研修後2〜3週間は研修で学んだことを実践する期間として、継続的な学習を設けるというサイクルをご提示しています。
また、当初の懸案であった「お客さまのご不満を発生させない」ことを念頭においたカリキュラムも作成しています。
研修当日に気を付けたことは、受講生は恐らく、自分たちはコールセンターといってもいわゆる世の中に多く存在するBtoCのセンターとは違い、難しく特殊な案件を扱っているという自負があります。
一般的なコールセンターと一緒にされることには違和感があるだろうという点です。そのため、用語の使い方や事例の紹介、視聴する音声などに十分配慮をして進めました。
また、研修をスタートさせると、講師から教わる場よりもディスカッションや受講生同士のアドバイスのほうが圧倒的に受け入れやすそうだったため、急遽、カリキュラムを変更して、さらに実践学習を増やしました。
例えば、前述の時間外対応のことをお客さまにお伝えする際のトークをグループワークで検討し、最後にはそれぞれのグループが発表した内容のいいとこ取りをして、最終的なトークにまとめるなどです。
そこで、同じ内容を伝えるにしても、その説明次第で印象がかなり違うことに実感として気づけたようです。
そうしていくうちに、研修の温度感がぐっとあがり、みるみるうちに学びが深まるのがわかりました。
途中、研修が進行するなかで、その研修自体に違和感を覚えていたらしい担当の方が折に触れて疑問やネガティブな意見をしてくる場面がありました。
しかし、研修の場が自由に意見交換できる雰囲気になっていたこともあり、互いの意見を尊重しつつ、最終的にはポジティブに「我が社における電話応対のあり方」についての議論に至った場面は印象的でした。
5.コミュニケータ研修の効果
最初の打ち合わせから研修終了まで、2ヶ月間ほど準備期間を取った作業でしたが、6時間の最後の「本日の気づき」「明日からトライしたいこと(宣言)」の共有では、こちらが想像した以上に深いレベルで学びを吸収して頂き、明日からの対応にむけて前向きな姿勢が伺えました。
「自分がよかれと思ってやっていたことが、真逆だったことに気づきました」
「応対の品質などは意識せずにやっていたけれど、それがお客さまにどんな風に影響しているかを考える機会になり、ハッとしました」
「うちは特殊と思っていたけれど、お客さまにとっては他社含めてテクニカルのサポートのひとつの窓口であって、そう思ってるのは自分だけなのだと気づけました」
「ゆっくり話す、よい印象で話す際の具体的なテクニックを学ぶことができ、明日から使ってみたいと思います」等々
残念ながら、このコールセンターの場合は、その後の状況確認のためのミステリーコールなどをすることができないため、具体的な成果を数字で確認できていないのですが、また一定期間を経た頃にクライアントさまにヒアリングできればと思います。
いかがでしたでしょうか。
コールセンターにおいては研修が品質の鍵を握ります。また、同じ研修をする上でも、事前の企画の精度によって学びや成果が大きく変わります。今後、このようなコミュニケーター研修を企画される際の参考になれば幸いです。
参考になりましたか。
コールセンター・チーフコンサルタント 石橋由佳
サービスのご紹介
クレームに直面したときに落ち着いて対応するためのオリジナルのサポートツールを用いた研修です。クレームの傾向をヒアリングしたうえで対応方法を検討し、研修内容をご提案します。
「感じのよい応対」を目標として、学習効率の高いカリキュラム。「わかる」を「できる」に変えるため、オリジナルのテキストやロールプレイングを取り入れた実践型の研修です。