誰がする?モニタリングのフィードバック

モニタリングのフィードバックは誰がするのが良いのか

コールセンターにおける品質向上には、実際のオペレーション内容をチェックするモニタリングとフィードバックは欠かせません。しかし、そうした活動は大きな労力を必要とし、かつ多くの費用が投じられています。

残念ながらその効果を最大限に活かせていないケースは意外と多いものです。

体制や計画は組まれているものの、徐々に本質的な活動からはかけ離れてしまい、「管理のための管理」となってしまっているケースは珍しくありません。品質管理の担当者自身も、ルーチンワーク化している業務として、普段は手応えなく遂行しているのです。

一方で、コールセンターの上層担当者はモニタリングとフィードバックが人材育成の最大の手段と認識していることも多いのですが、実際は年に数回、あるいは1回につき30分程度のフィードバックを実施し、コミュニケーターに気づきを促す程度しか活用されていないのでは。

本来はコール現場でのきめ細かいフォローや指導が大切になります。

センターによってモニタリング+フィードバックの運用形態は様々ですが、コンサルティング業務のなかで、「フィードバックは誰がやるのが一番いいですか?」といったご相談をよくいただきます。

運用として多いのは、モニタリング評価はカリブレーション(採点のすり合わせ)ができている品質担当者(以下、QA担当者)が実施し、その結果をコミュニケーターにフィードバックするのは、大きくわけて2つの体制があります。

ひとつは、QA担当がそのまま引き続きフィードバックまで行うケース、もうひとつはモニタリング結果を現場のSVへと引き継ぎ、SVからコミュニケーターに行うケースです。

どちらがいいやり方なのかといえば、本当に一長一短です。

以下、少し整理をしてみましょう。

[QA担当がコミュニケーターにフィードバックをするケース]

  • QA担当者は、日々、応対品質と向き合っていることから、応対品質や人材育成をよく理解しており、フィードバックの内容の質も高いことが想定される。
  • また、応対品質をメインに担当しているため、繁忙などの事情に影響されることなく、当初の計画通りに実行できる。
  • QA担当者とコミュニケーターは日常のコミュニケーションが少ない場合が多く、お互いの信頼関係が築けていない場でのフィードバックは形式的になるケースも多い。
  • SV(スーパーバイザー)はQA担当者からのフィードバックに同席できないケースがほとんどで、コミュニケーターがどのような内容のフィードバックを受けて、どのような反応をしたかがわからず、その後のフォローや日常の指導に活かせない。
  • コミュニケーターからみると、日常のSVから受ける指導と、QA担当者からのフィードバックにつじつまが合わないケースもある。

例えば、QA担当者は傾聴や共感力、もっといえば雑談力やお客さまへの柔軟な反応力を強化したいと思っているが、現場のSVが細かい言葉遣いなどを指摘したり、通話時間を長くすることを嫌ったりするため、コミュニケーターは自由な会話にはいかないようです。

[SVがコミュニケーターにフィードバックをするケース]

  • コミュニケーターの性格や日常のコールの特性をよく把握しており、また人的関係もできていることから、リラックスした場で進めることができる。
  • 一方で、人間関係やコミュニケーターの業務態度などがあまり良好でない場合、そのことがフィードバックに悪影響を及ぼしてしまうこともあります。
  • フィードバックは非常に難易度の高い業務であるが、SVが人材育成やフィードバックのやり方などの教育を受けていないケースが多く、見よう見まねで実施している。そのため、モニタリングシートに書かれた結果を単に読み合わせるにとどまっているケースも多い。
  • そもそも、モニタリングの目的や会話の流れ、最終的なゴール設定が定義されていないケースも多く、SV任せになっており、担当者ごとにかなりのばらつきがある。しかし、センターはそのことを把握しきれていない。
  • SVにとっては、人が採点した結果を伝えること自体が難しく、理解度が浅いままやらざるを得ないという苦労もある。また、SVが評価結果に納得できていないケースがあったとしても、QA担当とのすり合わせが実行されるケースはほとんどなく、他者からの伝言のようなフィードバックとなってしまう。

こうやって改めて整理をしてみても、どちらがフィードバックを担当するのがいいのかは
本当に迷うところです。

ただ言えることは、どちらかに優位性があったとしても、実際にそのセンターで展開できない運用スタイルであれば、机上の空論で終わってしまいます。負荷が大きい業務である分、現実可能な選択肢を中心に検討するのがよいでしょう。そのうえで、課題を洗い出し、いかに精度をあげるのかに注力するほうが現実的です。

品質向上への取り組みを検討する際、現場のSVの関わりに着目されることは少ないですが、何よりも大切なことは、SVがモニタリングの結果をしっかりと把握し、そのことを念頭に置きながら、日常のフォローや指導、教育にあたることです。

SVが品質向上に関心が薄いと、その時点でコミュニケーターは品質向上への意識が保ちづらくなります。

コミュニケーターにとってのSVの存在は大変大きいものです。もしSVが「SVとしての教育」を受けていない場合は、まずはそこから着手するのも良いでしょう。

SVが品質向上への理解を知識、技術を深め、QA部門との連携を図りながら、横断的にコミュニケーター育成をすることが一番大切であると、再認識してください。

参考になりましたか。

コールセンター・チーフコンサルタント 石橋由佳

サービスのご紹介

モニタリングとフィードバックの目的を理解し、より高精度な活動に変化させることを目指した実践的な研修です。コールセンターの実情に合わせて柔軟にカスタマイズ可能、体験学習が6割を超える実践的な研修で、課題を見極める力を養います。

コールセンターの存在意義や「あるべき姿」を可視化する取り組みです。センターミッションを掲げることで、全体が同じ方向を目指して日々の業務に向かうことができます。