思いを伝える手法とは

表現力に頼らず、具体的な言葉で、思いを伝えることはできるでしょうか

コールセンターにおいてコミュニケーターのスキルを評価する際、私たちが重視しているのが、「お客さまのお役に立ちたい」という気持ちをいかに伝えることができているかという点です。

なぜなら、決められた挨拶や言葉遣い、会話の流れ、お礼やお詫びの言葉など、「型」としての技術を使うだけではお客さまの心を動かすことはできないからです。

型ばかりの応対の場合、購入や申込などの行動につながらない、ひいては、その会社やブランドにマイナスの影響をもたらすといったことにつながりかねません。

お客さまに思いを伝えるためには、一般的には表現力を磨くことが重要です。もう少し細かく言うなら、会話を進める際の「抑揚や声の調子」、お客さまの言葉を受け止める「あいづち」、さらには「お礼やおわび」といったスキルが関係します。

言ってみれば、会話のポイントで自分の感情が伝わるように話す、といった具合でしょうか。

ところが、中にはこういった「表現力」をブラッシュアップすることが難しいセンターもあります。例えば、お伝えすべき情報の難易度が高く、コンプライアンスや正確性の観点から内容に集中せざるを得ない場合などです。

さらに、高い専門性が要求されるため、表現力やコミュニケーション能力よりも問題解決や知識が優先される場合なども該当します。

例1:
「 本日のお問い合わせは、○○ということでございますね(割と詳しく)。大変お困りのことと思います。私が最後までしっかりとサポートさせていただきますので、どうぞご安心くださいませ」(某テクニカル系センター)

例2:
「○○でお困りということですね。今回のパソコンはお仕事でお使いですか?もしくはプライベートでお使いですか?」 仕事で使っている旨を伝えると、「さようでございますか!それでは、大変お困りですね、なるべく急いで解決できるよう、このあとしっかりとご案内させていただきます」(某パソコンサポートセンター)

例3:
「○○ということでございますね、かしこまりました(用件の復唱確認)。あらためまして、本日、担当させていただきます私××と申します。どうぞよろしくお願いいたします。 さて、〜」(パソコン有

こうしたケースでは、会話の内容がどうしても無機質で事務的なものが多くなります。時には、この淡々としたやりとりがお客さまへ冷たい印象を与えかねません。そのようななかで、あいづちや謝辞、抑揚などの表現力でカバーするのが難しい場合は、他のアプローチを取り入れてみることもよいかもしれません。

その一例が、表現力に頼らず思いを言葉にして伝える手法です。
具体的な例を3つご紹介しましょう。

これらの事例では、入電タイミングでお客さまの用件を最後までしっかりとお聞きし、その後、丁寧に復唱確認した後に、改めて挨拶をする、思いを伝えるといったスタイルです。折り目正しく、とても感じがよい印象が残ります。

コミュニケーターにとっては、単に「お客さまの立場にたって」などと概念的に指導されるよりも、言葉そのものを必ず伝えることを教わるほうがわかりやすく、やりやすいことでしょう。

その際、冷たい調子や淡々と話したのでは元も子もありませんので、豊かな表現力が必要になるのですが、このシーンについては、やや静かめの単調な話し方のコミュニケーターであっても、思いや丁寧さを伴って言えていることが多いのも特徴です。

品質管理としてはモニタリング評価の結果に着目しがちですが、現在、「お客さまのお役に立つ気持ち」がどのくらい伝えることができているか、また更にその思いを伝えるためにはどうしたらいいかといった視点から、改めてコールを見直してみましょう。

ご参考になりましたか。

コールセンター・チーフコンサルタント 石橋由佳

サービスのご紹介

「感じのよい応対」を目標として、学習効率の高いカリキュラム。「わかる」を「できる」に変えるため、オリジナルのテキストやロールプレイングを取り入れた実践型の研修です。

ご高齢のお客さまにも満足いただけるスムーズな会話の運びや、感じのよい応対を目標に学習します。オリジナルテキストやロールプレイングを取り入れた実践型トレーニングです。