コールセンター お客さまの話を「傾聴する」3つのプロセス
お客さま満足度に大きく影響する「傾聴」
お客さまと良いコミュニケーションを図るには、「聞く」力がたいへん重要になります。とくに電話応対であればなおさらです。なぜなら、お客さまは「あっ、話をよくきいていないな」「あまり私のことには関心がないんだな」と感じると、とたんに真の会話をすることを諦めてしまうからです。
そうなると、当たり前ですが、高い顧客満足を得ることは難しくなります。
最近は、コールセンターの品質管理の一貫で顧客満足度調査を常に実施しているところも多いのですが、いくら説明がよく、話すことに長けているセンターでも、話を聞くことが弱いとお客さまの満足度は頭打ちになります。
コールセンターの顧客満足度調査の最後の部分に、備考欄などを設けている場合ではお客さまからのダイレクトな声を聞くことができます。
満足度の高い応対に対しては「話を親身になって聞いてくれました。ありがとうございます。」といった類のコメントが数多く寄せられています。
こうしたことからも、コールセンターにとって「話を聞く」ことが重要なのがよくわかります。
コールセンター「聞く」の3つのプロセス
お客さまの話を「聞く」ために、しばしばクローズアップされるスキルが「傾聴」です。
コールセンターでは傾聴力を磨くために、オウム返しを推奨しているセンターも多くありますが、形だけのあいづちやオウム返しの研修や教育では、お客さまの心をつかむためのトレーニングにはなりません。
それでは傾聴力ははどのように磨くのがよいのでしょうか。
ここからは、お客さまの話をしっかりと「聞く」ためのプロセスについて考えてみたいと思います。
私たちは、「お客さまの話を聞く」のはいくつかのプロセスに分かれると考えています。
お客さまの思いを「察する」 ⇒ 次にその思いを受け止めて「立ち止まる」 ⇒ 最後に「話を聞いて、共感する」という流れです。
(1)察する
「察する」はお客さまの思いを受け止めることです。お客さまは自分の不安や不満をそのまま口に出さないことも多いので、「声にならない声」も含めてお客さまの繊細な心の状態をキャッチすることが大切です。
そのためには、音声として聞こえてくる言葉だけでなく、声色やニュアンス、間合いや沈黙などにも神経を集中させなければなりません。
(2)立ち止まる
お客さまの要望やご不安、不満など、何か言いたいことがあると「察する」ことができたときには、話をどんどんと進めずにいったん会話の進行を軽く止めます。
電話応対では、つい会話を先に進めることを意識しがちですが、お客さまの次の言葉を待つように、あえて少しの「間」を取るのも一つの方法です。小さな沈黙を設けることができた際、お客さまが「それでね、、、」「あのね、、」などとお話をされる場合もあります。
また、お客さまが考えをうまく言葉にできないようなら、「お客さま、○○でございますか?」などお尋ねしてもよいでしょう。
(3)話を聞いて、共感する
お客さまが自分の思いや事情を話してくださったら、ここで「話を聞いて、共感する」というプロセスに入ります。
具体的にはバリエーションのあるあいづちやオウム返し、言い換えといったテクニックを使うのですが、気持ちがこもっていない形だけの対応はかえっていやな印象を与えます。お客さまの心の琴線に触れるような豊かな表現力が必要です。
例えば、「はい」といったひらがな2文字のあいづちであっても、抑揚やスピード感を変えることにより3パターンぐらいに使い分けることができます。良好な意思を示す際の気持ちのよい「はい!」もあれば、その逆に、残念、心配そうなニュアンスを伝えるための言いづらそうな「はい...」。また、特に心情的な意味を含まない「はい、(そうです)」といったような感じです。あいづちの代表格である「さようでございますか」なども同様にバリエーションを持って使い分けることができます。
「傾聴」の習得で期待される電話応対効果
この3つのプロセスは実に奥が深く、対面のコミュニケーションの場合でも決して簡単ではありません。ましてや、顔が見えない電話のコミュニケーションではなおさらです。
そのため、コミュニケーターには、研修や日頃の指導を通じて、その重要性ややり方を教育していく必要があります。
コミュニケーターがお客さまの思いを不安なく受け止めるには、一定の知識やスキルが必要ですし、お客さまからどんな話が出てくるのかわからない状態も怖いものです。
ましてや、お話をお聞きした後にこちらが話す番になったときに、こちらの気持ちが伝わるだけの言葉と豊かな表現力は一朝一夕に身につくものではありません。
しかし、これらは丁寧なコールセンターの研修や教育によって習得することが可能です。学習では、概念を理解するだけではできるようにはならないため、各種の教材音声を聞いて考えたり、様々な場面を想定したロールプレイングをしたりと、練習を通じて一歩ずつ学んでいきます。
boosterが以前にコンサルティングをしたコールセンターでは、傾聴力を強化するため、単語帳のような『傾聴強化 カード型ドリル』を制作しました。
カード型ドリルは単語帳のようなスタイルで、カードの表面にはお客さまの話(セリフ)、裏面にはコミュニケーターの返答例が書かれています。
例えば、『最近、初孫が生まれて、ちょっと忙しくて(それで手続きが遅れちゃって)』といった雑談のようなものが書いてあり、その裏面には『さようでございますか!、 それはおめでとうございます♪ 嬉しい忙しさですね♪』と、そのセンターがコミュニケーターに言ってほしいセリフの一例が書かれています。これらを100本ノックのように、繰り返し練習することにより、実際の応対の場面でもとっさに反応ができるようになりました。
この教育では、最初は型どおりな印象のものもありましたが、徐々に感度があがり、最終的にはお客さまに寄り添った、親身な応対につながりました。その結果、お客さまからの温かいフィードバックがいただけて、コミュニケーターがとても喜んでいたのが印象的でした。
このように、傾聴は笑顔やスピードなどと違い、習得には少し時間がかかる技術ですが、一旦身につけることができれば、お客さまとの真の会話が展開できるため、コミュニケーターの業務へのモチベーションもぐんと高まることにもつながるでしょう。
いかがでしたでしょうか、コールセンターの品質向上のご参考になれば幸いです。
コールセンター・チーフコンサルタント 石橋由佳
サービスのご紹介
「感じのよい応対」を目標として、学習効率の高いカリキュラム。「わかる」を「できる」に変えるため、オリジナルのテキストやロールプレイングを取り入れた実践型の研修です。
boosterでは、独自の応対品質テストをご提供しています。コミュニケーターのスキルアップや新人のデビュー時チェックなどに活用できるテストです。コミュニケーターの着実な成長が期待できます。