コールセンター 電話応対のスクリプト活用 成功事例
1.スクリプトによりアウトバウンドの成果が数倍もアップ!
都市銀行A行さまでは、高いセキュリティ機能を付加したキャッシュカードの切り替え獲得を目指し、コールセンターから口座保有者にむけてアウトバウンドを実施していました。
そのカードはお客さまにとっての実質的なデメリットはなく、お申し込みをする方が大多数であろうとプロジェクト担当者は事前予測をしていました。ところが、お客さまにとっては大きな魅力に映らなかったのか、もしくは簡単であっても手続きが面倒に感じたのか、申込み獲得率が思ったようにあがらなかったそうです。
そこで、A行さまより当社boosterにアウトバウンドの申込み獲得率アップのご相談をいただき、改善プロジェクトがスタートしました。
2.まずは現状把握からスタート!
まず、私たちが最初に実施したのが以下で、目的としては、現在の取り組みのよい点と改善すべき点の発見です。優れた点については引き続きその部分を活かし、改善点については迅速に解決する必要がありました。
(1) アウトバウンドコールのモニタリング
(2) 電話応対スクリプトのチェック
(3) 研修カリキュラムの確認
(4) 各種レポートの確認
コールセンターの業務改善をする際は、お客さまとコミュニケーターとの通話を最も重視しています。そうです、「答えは現場にある」のです。
ランダムにモニタリングをすると、応対品質のレベルやばらつき、提案説明のわかりやすさや魅力、お客さまのコンデションなどが把握できます。このときは、以下のような傾向が確認できました。
<既存アウトバウンドの傾向>
○お客さまのA行へのロイヤリティは高く、多くの人が通話を承諾している
○新しいカードの説明はわかりやすく、お客さまがその内容を理解できている
✕会話のスピードが速く、全体として事務的な感じがする
✕「個々のお客さまへのご提案」ではなく、「リストに従って電話をしている」という印象がある
✕会話全体の雰囲気はセールス色が強く、お客さまが身構えてしまっている
アウトバウンドの通話音声を聞いて、最も気になったのが、セールス=営業的な雰囲気が少なからず伝わってくることでした。多くのお客さまは、会話を進めていくにつれ、あいづちが淡々とした感じとなり、「はい」や「はぁ・・・」と言いながら、やや引いた感じを醸し出していました。
私たちは、コールセンターの応対を語る際に、よく「距離感」という表現を使いますが、その点においては、オープニングよりもクロージングのほうが圧倒的に距離は離れてしまっていたのです。
3.アウトバウンド 獲得率アップにむけてのアクション
それらの特徴を理解した上で、短期に獲得率をアップさせることを念頭に、まずはスクリプトを見直し、その上で簡単な教育を施すプランをたてました。
スクリプトは全体構成に問題はなく、よくまとまっていたのですが、一部のセリフ(緑字部分)を書き換えました。
<Before>
「従来のキャッシュカードに○○機能もプラスされ、大変便利です。
この機会にぜひ!!!お申し込みをいかがでしょうか」
<After>
「従来のキャッシュカードに○○機能もプラスされ、大変便利です。
口座をお持ちの皆さまに順番にご案内しておりますが、今回、お切り替えはいかがなさいますか(いかがいたしましょうか)」
非常に微妙な違いですが、修正した部分をよく見ると、それまでのスクリプトは「典型的なお勧め」だったのが、新しいものは「お客さまの意思決定に任せる」とスタンスが変わっているのがおわかりいただけると思います。
私たちは、スクリプトを「楽譜」だと捉えています。どんなに優れたスクリプトであったとしても、コミュニケーターがその意図を理解し、どんな口調で読み上げていくのかを捉えたうえで練習しなければ、うまく活用はできません。
スクリプトの箱の中に書かれた一つひとつのセリフにはそれぞれの意味があり、それらは技術を用いて読む必要があります。例えば、アウトバウンドの場合は会話の冒頭部分で通話の承諾をいただきますが、そのシーンでは配慮や遠慮ぶかい雰囲気が必要ですし、ご契約のお礼が記された部分は感謝が感じられるようにしなければなりません。
3時間の研修では、新しいスクリプトの声出しをして、その後、ロールプレイングで反復練習をしました。このときに最も力を入れたのが、スクリプトの書き換えた部分の読み方(=言い方)指導です。
それまでのセールス色が強く、またリストに対して一斉に電話をしているような雰囲気を排除するために、全体としては「あなたに」感が出るような口調にしています。
また「今回、お切り替えはいかがなさいますか」の部分は、お客さまの意思を尊重し、確認するような様子に仕上げていきました。
4.最終成果
これらの一連の取り組みの成果としては、アウトバウンドの申込み獲得率をそれまでよりも数倍にアップさせることができました。プロジェクト期間はキックオフから終了まで、約3週間でしたので効率よく改善ができたのではないかと考えています。
このケースは、案内する商品やターゲットは一切変えず、スクリプトのほんの一言を変更し、読み方を調整しただけで結果が大きく変わりました。
このように、スクリプトを見直しただけで効果が大きく変わるケースは決して珍しくありません。いかにスクリプトの及ぼす影響力が大きいかがわかります。
いかがでしたでしょうか。今後のコールセンタ アウトバウンド業務の参考にしていただけましたら幸いです。
コールセンター・コンサルタント 石橋由佳
サービスのご紹介
スクリプトの重要性を理解し、顧客満足やセールス向上に繋がるスクリプトの作成を目指した研修です。また、boosterオリジナル『1対N型ロールプレイング』のやり方も学びます。
boosterのコールセンター現状診断は、応対品質のみならず、運営面における課題も把握し、顧客満足と事業貢献を両立するコールセンターづくりをお手伝いします。