コールセンターの印象を決める!オープニングとクロージング
1.基本スキルを実践的に教える
boosterでは、「コールセンターの応対品質がなかなか上がらない」というご相談をよくいただきます。ひとくちに応対品質といっても、コールセンターの運営状況はさまざまで、品質が上がらない原因も異なります。
品質低下の原因を探っていくと、「お客さまに対する姿勢(マインド)に問題がある」と、本質的な課題が潜んでいるケースがあります。その場合、本来であれば原因を掘り下げたうえで対処する必要があります。
しかし、上記のようなプロセスを踏んでいては、応対品質を向上させるには時間と手間がかかりすぎます。このような課題があった場合でも、一旦は「いま、できること」から着手する、という考え方も重要になってきます。
コールセンター全体で応対品質への意識が低い場合、着手しやすく、また効率的に成果が見える取り組みがよいでしょう。本ケースで、私たちがよくご提案するのが、「オープニングとクロージングの改善」です。
2.オープニングの第一声がその後の会話を左右する
オープニングは「この人と話をしたいかどうか」を決める大切なシーンです。コールセンターの現場にいると、前の応対の後処理が終わった後、なんとなく次の電話に出てしまっているケースをよく目にします。
お客さまにはお出迎えする気持ちが感じられず、どことなく印象がよくないまま本題に進みますが、そこから、良好な雰囲気の会話へと転換させるのはなかなか難しいものです。コミュニケーターには、「オープニングは、自分が考える最も素敵な話し方で出ましょう。それは自分のためでもあります。」と伝えています。
ここで事例をご紹介しましょう。boosterではコールセンターの品質調査として、ミステリーコールを実施することも多くあります。ミステリーコールとは、調査員が一般のお客さまを装ってコールセンターに電話し、その応対を評価することで品質レベルや特徴などを把握します。競合他社と比較したい場合によく使われる手法です。
録音をするお客さま役の調査員は、各社の応対品質をフェアに比較をするため、問い合わせをする際には、どの会社にも同一の問い合わせシナリオを使い、話す際はなるべく同じテンションにするように心がけます。お客さま役の話し方や雰囲気に差があると、コミュニケーターの応対に影響を与えてしまうためです。それでも、当然ながら、コミュニケーターの対応によってお客さま役の反応が自然に変わることもあります。
あるとき、調査員がまずA社に電話をしたところ、明るい声で、非常に感じのよいオープニングだったので、「お急がしいところ、すみません。ちょっと教えてほしいのですが〜」と言葉を発したそうです。
しかし、事前に準備されていた問い合わせシナリオには、「お急がしいところ、すみません。」といったフレーズは書いてありません。とても感じがよかったので、思わず気遣いの言葉を添えながら話しかけていたそうです。ここからわかるのは、オープニングの第一声が感じがよいと、お客さまの優しい部分を引き出すということです。
これに対し、その後に調査員が電話をしたB社は、どことなく雑で、冷たい印象のオープニングだったため、第一印象がとても悪かったそうです。実際に録音された音声を確認すると、お客さま役はテンションが低く、語気もやや強くなっていました。先ほどとは真逆で、お客さまの厳しい一面を引き出してしまっているのです。
品質調査のプロでもこのようにコミュニケーターの応対の影響を受けるのですから、一般のお客さまならなおさらでしょう。オープニングの第一声が良くないと、お客さまが前向きに話してくれず、ご案内がスムーズに進まないなどと、良好な会話づくりとはほど遠いものになります。
3.オープニングでは「用件確認」と「改めての自己紹介」を
インバウンドのコールセンターでは、最初にお聞きした入電理由を改めて復唱確認することが多いものです。用件確認はシンプルな動作ですが、お客さまのご用件に合ったご案内をするために有効です。
コミュニケーターが「○○についてですね」と確認したときに、もしも誤解があればお客さまは訂正することができますし、そのプロセスをふむことで、「きちんとした会社だな」といった印象にもなり、また傾聴を示すことにも繋がります。そのため、用件確認までをオープニングと捉えるのがよいでしょう。
また、boosterでは、この後に「改めての自己紹介」を入れることも推奨しています。「本日は、◯◯の件ですね、かしこまりました。改めまして、わたくし**と申します。わかりやすい説明を心がけますのでどうぞよろしくお願いします」などと、こちらの思いを伝えるのです。
このシーンは、お客さまの反応もよく、会話のスタート段階で温かい雰囲気を作ることができます。また、最後に「**さん、ありがとうね」と声をかけられたり、次回に指名をしていただけることにもつながっています。
4. 余韻が残るクロージング
米国の調査によると、途中の会話の質がさほど高くない場合でも、クロージングがよいと顧客満足が高くなるという結果が出ています。
私たちも品質調査において、そのことを痛感しています。会話の途中は説明がわかりづらい部分があったり、早口や語尾のびが気になったとしても、会話の締めくくりであるクロージングがとてもよいと、まるで会話全体がよかったように感じてしまうこともしばしばあります。
このように、クロージングは最終的なお客さま満足に影響するため、boosterの電話応対研修では「余韻の残るようなクロージング」を意識するように伝えています。
5.クロージングに入る前に「不明点の確認」を
インバウンドの場合、クロージング前に、「本日のお問い合わせや、別のことでもかまいませんが、何かご不安やご不明なことはございませんか」と声をかけます。このシーンは古くからコールセンター業界のスタンダートになっているせいか、ただ言っているだけの担当者も少なくありませんが、せっかくお客さまの理解を確認する機会なのに、残念な事です。
コミュニケーターに「10人のお客さまに不明点の確認をしたら、何人ぐらいから質問をもらえますか?」と聞くと、その反応はさまざまです。ほとんど質問されない人もいれば、半分ぐらいの人が何かしら話してくるという人もいます。
この差は、何から生まれるのでしょうか。それは、不明点確認の聞き方です。本来の意味を理解して、「お客さま、このお電話はもうすぐ切れてしまいますが、何か聞いておきたいことはありませんか?」と手を差し伸べるように聞くことができれば、お客さまは一旦自分が理解できているかを確認してくれるでしょう。
一方で、スクリプトに書いてあるからただ言っているような場合は、お客さまは考えもせず「はい、大丈夫です」と答え、そのまま先に進むことが多いものです。不明点の確認をする以上、本来の意図をもって丁寧に実施したいものです。
<「気遣いトーク」が次への糸口になる>
クロージングの場面に「気遣いトーク」を入れることも有効です。気遣いトークとは、「暑い日が続きますが、お身体にどうぞ気を付けてお過ごしください」といった季節に合わせたご挨拶や、「これから外出とのことですが、どうぞ気をつけてお出かけください。」など、お客さまへの気遣いを伝えるフレーズです。
このようなひとことを丁寧に親しみ持って伝えると、その瞬間にお客さまとの会話が温かい雰囲気に変化することもあります。既存顧客対応の窓口など、顧客との継続的なおつきあいがある企業の場合は特に有効です。
6.ロールプレイングによる練習がおすすめ
オープニングやクロージングの質を高めるには、コミュニケーターがその重要性を理解し、その上で練習をします。このシーンは、比較的コミュニケーターがイニシアチブを取れる場面のため、改善が図りやすいのが特徴で、モニタリングなどのスコアも比較的短期間にあげることができます。
感じのよいオープニングにより、よい雰囲気で会話をスタートさせ、またクロージングでは感謝や気遣いを示しながら最後によい印象を残す。これをゴールにこのふたつのシーンを磨くことができれば、コミュニケーター自身のモチベーションにもつながり、さらなる品質向上のきっかけをつかむことができます。
いかがでしたでしょうか。オープニング&クロージングは約2週間から1ヶ月もあれば大きく変化をさせることができます。応対品質を向上させたい、そのようなことがありましたら、シンプルなこのシーンから着手してみるのはどうでしょうか。
コールセンターコンサルタント 石橋由佳
サービスのご紹介
コールセンターに求められていることは何か?に着目し、センターの「あるべき姿」に向けて、応対品質の改善をお手伝いします。
「感じのよい応対」を目標として、学習効率の高いカリキュラム。「わかる」を「できる」に変えるため、オリジナルのテキストやロールプレイングを取り入れた実践型の研修です。